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住宅街から盗まれ質屋に売られた「お地蔵様」 いったい誰の「所有物」なのか?
お地蔵様は微笑みを浮かべながら道行く人を暖かく見守り続ける存在だ

住宅街から盗まれ質屋に売られた「お地蔵様」 いったい誰の「所有物」なのか?

道端やお堂などに祀られている「お地蔵様」。微笑みを浮かべながら、道行く人を暖かく見守り続ける存在だ。そんなお地蔵様を盗んだ容疑でこのほど、無職の男性が書類送検された。

報道によると、男性は昨年10月、神戸市内の住宅街などに安置されていたお地蔵様計7体を盗み出し、質屋で1体につき約3000円で換金していた疑いがもたれている。お地蔵様はすべて無事、元の場所に戻されたそうだが、なかには阪神大震災からの復興を「見守ってくれていた」ものも含まれており、住民たちからは怒りの声があがっているという。

ところで、こうしたお地蔵様だが、法律的にはいったい「誰のもの」なのだろうか。設置されている土地の所有者のものなのだろうか。それとも他にルールがあるのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

●「お地蔵様の所有者」と「その土地の所有者」は必ずしも一致しない

「お地蔵様は、土地とは独立した存在ですので、法律上は土地とは別の『動産』として扱われます。

つまりお地蔵様が設置されている土地の所有者と、お地蔵様そのものの所有者は、必ずしも一致しません」

それでは、誰が所有者になるのだろうか?

「お地蔵様の所有関係を規律する法律はありませんので、一般原則に従い、民法の規定によって所有関係が定まります。

そして、お地蔵様はその成り立ちによって所有者が千差万別だとは思いますが、一般的には自治会・保存会あるいは特定の宗教法人など、私的な団体の所有であることが多いと思います。

なぜなら団体所有の場合、他の形態による所有のデメリットを回避できるという利点があるからです」

●団体所有なら「相続問題」が発生しない

一体どんなデメリットを回避できるのだろうか?

「たとえば、個人所有であれば、所有者が寿命を迎えるたびに、『相続』の問題が発生します。

また多人数で共有した場合、権利関係が複雑になって管理がままならないおそれもあります。

他方、国や地方自治体がお地蔵様を所有・管理することは、国家と宗教の分離を定めた『政教分離原則』に抵触します」

足立弁護士はこのように解説したうえで、「したがって、全国的に見ても、永続性のある私的な団体が、責任をもって管理をするパターンが多いのではないかと思われます」と推察していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

足立 敬太
足立 敬太(あだち けいた)弁護士 あい弁護士法人富良野・凛と法律事務所 旭川OFFICE
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に複数の分野を取り扱う。「常に相談者・依頼者様の視点に立ち、分かりやすい説明を心がけています」

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