手弁当ではなく寄付で公益活動持続 韓国の公益弁護士がプロボノの課題語る

社会や人権に関する課題について問題意識のある弁護士らで構成された「JFPIL(Japan Forum on Public Interest Lawyers)」が8月27日、弁護士の公益活動について議論するWebセミナーを開催した。公益活動を専業にする3人の韓国人弁護士が登壇し、同時通訳によりそれぞれの取り組みを紹介した。


司会進行を務めた青木有加弁護士はセミナーの冒頭、日本の弁護士による公益活動について、「日本の弁護士は人権擁護や公益活動に取り組んできたが、これらの活動には収益がないものが多いので、他の仕事で収入を得ながら、公益活動は手弁当で行われてきた。日本社会や弁護士を取り巻く状況が変化するなかで、公益活動を続けられるかという悩みがある」との現状を指摘。公益活動を専業で行う韓国の公益弁護士に関しては、「日本の弁護士にはないスタイル」だとして、「韓国の公益弁護士の話を伺い、もっと公益活動に力を注いでいきたい」と述べた。

クアンジュ(光州)で公益活動を行うイ・ソア弁護士は、韓国の公益弁護士の活動内容や、財政基盤などを解説した。また、ローファーム内に設置された社団法人で活動するカン・ジョンウン弁護士と、性的少数者(マイノリティ)の青少年の支援などを行うNGOで活動するソン・ジウン弁護士は、それぞれの活動内容などを講演した。3人の弁護士は、韓国の公益弁護士について、寄付金など収入源が主な収入源になっている点を指摘し、財政基盤の不安を訴えた。イ・ソア弁護士は公的な財政支援の仕組みが必要とした。

韓国では約120人の弁護士が公益活動


イ・ソア弁護士は韓国で公益活動する弁護士(公益弁護士)について、「2000年ごろから活動が多様化、拡大してきて、現在は専業の公益弁護士が登場している」と解説。現在、約120人の専業の公益弁護士がいるという。

公益弁護士が所属する団体も様々で、大きく「弁護士が中心に設立した公益団体」「活動家中心の公益団体」「弁護士と活動家が共同で設立した公益団体」「ローファームの後援で設立した公益団体」「国や地方自治体などの出捐・委託により設立された公益団体」などがある。

公益弁護士の財政基盤としては、団体の活動に賛同する会員や一般市民からの寄付、ローファームからの支援、国から研究委託などを受けた際の委託費などがある。イ・ソア弁護士は、自身が所属する団体について、「権力から独立し、透明性を確保した事業を行うため、収入は寄付を優先することを原則にしている」とした。

イ・ソア弁護士は公益弁護士を取り巻く課題として、「公益弁護士が所属する団体は、ソウルなどの大都市に集中しており、地方で活動する団体はほとんどない」と公益弁護士が偏在している状況を指摘し、不均衡をなくす方法の必要性を訴えた。

また、「寄付者が減るかもしれないという不安はある」と財政面での不安も語り、「給与をサポートしたり、学費のローンを免除したりするなどの財政支援の制度が必要」と公的な支援の必要性も主張した。

ローファーム支援の公益弁護士「所属弁護士と収入に開きがある」


カン・ジョンウン弁護士は、ローファームの後援で設立された非営利の社団法人「ドゥル」で公益活動に取り組んでいる。「ドゥル」は「くまなく」や「あまねく」という意味で、「人に広く役立てるという思いが込められている」という。

ローファームが公益活動を行う団体を設立した背景について、「ローファームのプロボノ(公益)活動を推進し、社会的責任を遂行するため」と説明。障害者や難民、性的少数者、女性などの人権擁護に関する相談に応じたり、訴訟を担当したりする活動などを行なっている。また、ロースクールを対象にした実務実習や、新たに公益弁護士となった人に対する教育などにも取り組む。

「ドゥル」の収入源は企業など法人からの寄付が約6割で、そのほかは個人からの寄付や研究委託費などだ。「ローファームの後援で設立された公益団体でも、財政状況は十分ではない。ローファームに所属する弁護士とは収入に開きがある」と収入面での不安を語った。

公益弁護士グループの支援を受けNGOに参加


3人目の登壇者は、性的少数者の青少年の支援などを行うNGO「ティンドン」で活動するソン・ジウン弁護士。ティンドンでは、家庭や学校、職場などで差別や暴力を受けた青少年の相談対応や、避難場所(シェルター)の提供などの支援を行っている。

また、人権擁護のための法整備に向けた運動や、子どもの権利条約に関する国連の審議に参加したり、報告書を提出したりするなど、公的な活動にも取り組んでいる。

ソン・ジウン弁護士は2017年からティンドンに参加。参加から2年間は、公益弁護士のグループなどによる自立支援事業の支援を受けて、人件費を賄っていたという。

ティンドンの常勤の職員は6人で、そのうち弁護士は1人。ソン・ジウン弁護士はティンドンに参加する意義について、「性的少数者の青少年は人権侵害や、暴力といった犯罪に直面しても、親にも相談できないケースがある。心配することなく相談できる弁護士がいることで、より被害から救済される」と強調した。

ティンドンの運営は、全て市民からの寄付で成り立っている。ソン・ジウン弁護士は「2年間の自立支援事業がなければ、ティンドンに参加することはできなかった。子どもを直接サポートする団体なので、共感して寄付してくれる人は多いが、賃金を上げるのは難しい。平均と比べるととても少額だろう」と述べた。

※画像はWebセミナーのスクーンショット(2020年8月27日、弁護士ドットコムタイムズ撮影)

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