日本国際紛争解決センター設立セレモニー 寺田前最高裁長官が講演

日本国際紛争解決センター(JIDRC)は10月12日、国際的な仲裁・調停の審問施設となるJIDRC東京のオープニングセレモニーを開いた。JIDRCの審問施設は、大阪についで2か所目。

●寺田前最高裁長官が「平成と法」をテーマに講演


JIDRC東京は3月に、虎ノ門ヒルズ(東京都港区)内に開設。170名を収容する審問室2室と、控室などとして利用可能なブレイクアウトルームを6室、同時通訳ブースなどを備える。利用料金は、審問室として使える大会議室が4時間の利用枠で5万円など。JIDRCの早川吉尚業務執行理事・事務局長は、「これまでの東京での仲裁・調停手続は、ホテルの会議室などを借りて開催していたが、オーディオ設備が専門のものではないなど支障があった。今回、政府が8億円の予算を投じ、世界に誇れる施設を、極めて廉価に提供できるようになった」と活用を呼びかける。

新型コロナウイルス感染拡大の影響でセレモニーは10月開催となった。はじめにJIDRCの青山善充代表理事が、「私たちの夢は、JIDRCが世界中の国際仲裁・国際調停の重要なハブになること。日本が仲裁・審問の場として関与することにより、国際仲裁と国際調停において世界的な信頼と評価を得たい」と挨拶した。

来賓の上川陽子法務大臣は、「(政府は)日本型司法制度の強みを我が国の重要なソフトパワーとして位置づけ、司法分野における国内外の施策を総合的・戦略的に推進する取組みを進めており、本年を「司法外交元年」と位置付けている」と説明。JIDRC東京で非対面の審理が可能なことから、「アジアにおける中核的な国際仲裁センターとなるよう、果断にチャレンジしていきたい」と挨拶した。

基調講演では、寺田逸郎前最高裁長官が「薄まった壁──平成は法にとってどのような時代だったか」と題してスピーチした。平成の規制緩和や行政権力の関わり方を巡る立法について、「パブリックの中での「自分探しの旅」だった」と表現。「ビジネスにおける伝統的な秩序の維持という意味での事前規制からは脱却した反面、私的セクターにおける規律に関心を深め働きかける試みが目立つようになった」と総括した。

その上で、裁判外紛争解決手続(ADR)について「多くの国の例と比べると、その利用はいずれも小規模にとどまっている」と指摘。JIDRCについては、「ようやく民事紛争解決の私的なプロセスにも、公的な要素が加わる形で新しい展開を図ることができる。仲裁・調停には大きな潜在的可能性がある」と期待を込めた。

●日弁連は人材育成・中小企業の仲裁活用に期待


日本弁護士連合会(日弁連)は、2017年2月に出した意見書の中で、日本の国際仲裁機能の強化のための施策や体制整備を政府に対して求めていた。今回のJIDRC東京の創設は日本における体制整備の一環に位置づけられる。

国際仲裁に関するワーキンググループを担当する日弁連の上田英友副会長は、国際仲裁の現状について、「国際案件を手がける一部の法律事務所が担っていた。日本で国際仲裁がより活用されるためには、それを担う代理人や仲裁人の層を厚くする必要がある」と指摘した。

また、現状では大企業に限られている国際仲裁の利用の拡大にも期待する。上田副会長は「(国際仲裁の利用が進んでいない中小企業では)紛争が発生した場合を視野に入れずに、海外進出している」と指摘。海外企業との間で交わす仲裁合意条項の内容を十分検討せずに契約を交わす事例があり、相手が設定した仲裁国の条件で争うことになったり、争いを諦めるケースもあるといい、中小企業の顧問弁護士に対し、「顧問先が海外進出を目指しているときに、契約書の中に東京を仲裁地とする仲裁合意の規定を設けることを積極的に検討し、JIDRC東京を活用してほしい」と呼びかけている。

(写真は基調講演を行う寺田逸郎前最高裁長官 撮影/弁護士ドットコムタイムズ、2020年10月12日)

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