法テラスへの未払報酬請求を認容 国選の「被害者」解釈で

業務上横領罪の「被害者」の解釈の違いから、国選弁護人報酬を減額算定されとして、札幌弁護士会所属の弁護士が未払報酬の支払いを日本司法支援センター(法テラス)に求めた事件で、札幌地裁小樽支部(梶川匡志裁判長)が、弁護士の請求を認容する判決を出していたことがわかった。判決は9月16日付で、10月5日に確定した。


訴えを起こしていたのは札幌弁護士会の渡邉恵介弁護士。判決などによると、渡邉弁護士は2017年3月、北海道後志管内の町から委託を受けた町施設の警備員として勤務中、施設内で拾った現金入りのカバンなどを着服したとして業務上横領罪で逮捕された被疑者の国選弁護人に選任。事件にかかる民事賠償をめぐり、(1)被疑者と被害者との間、(2)被疑者と同町との間の2つの和解契約を成立させ、被疑者は処分保留となった。渡邉弁護士は、私法上の和解契約を成立させたとして、法テラスに対し、特別成果加算を請求した。

渡邉弁護士は、「被疑事実に係る被害者1人」の場合に該当するとして、算定基準に基づき、報酬額3万円を請求した。対して、法テラス側は、業務上横領の被害者について、カバンの所有者だけでなく、被疑者が働いていた警備会社、会社に警備を委託していた同町も含まれるとして、「被害者」を「3人」と認定し、うち2人分の和解契約を成立させたとして、加算報酬を2万8000円と認定した。

渡邉弁護士は、2019年5月に、「通常の解釈にはない見解を適用し、報酬を減らしたことに納得がいかない」として、差額の2000円を未払報酬として、法テラスに支払いを求めて提訴した。

裁判の中で、法テラス側は、「委託信任関係も副次的な保護法益」と主張し、同町や警備会社も「被害者」に含まれると主張。対して、判決は、警備会社については、委託信任関係が保護法益になるかについて「確立した見解はなく、委託信任関係を保護法益としなければならないとまでは解されない」と指摘。同町を被害者とする見解についても「およそ何らかの利益を侵害されたと認めることができない」と退け、法テラスに対して差額の2000円の支払いを命じる判決を言い渡した。

渡邉弁護士は判決について、「今回の判決で、法テラスの考えが直ちに変わると思っていないが、事例の積み重ねによって、法テラスの考えが変わればいい。法テラスの報酬体系は、今回のように、必ずしも弁護人の刑事弁護に対する動機付けに繋がっておらず、弁護人の良心に支えられている側面もある。弁護士の良心に支えられるような制度は、被疑者・被告人の防御権にも関わってくる」と指摘した。

法テラスは、弁護士ドットコムタイムズの取材に対し、「判決結果を踏まえ、適切に対応していきたい」とコメントした。

<訂正> 初出の段階では、渡邉弁護士が国選弁護人に選任された横領事件について、被疑者の警備員への警備の委託元を「北海道倶知安町」としていましたが、「北海道後志管内の町」に訂正します。北海道倶知安町ではありません。記事の確認が不十分でした。

(画像/法テラスのHPより)

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