民事裁判手続のIT化の実現に向けた意見書を提出、日本弁護士連合会

日本弁護士連合会(日弁連)は、6月18日に、「民事裁判手続等IT化研究会報告書-民事裁判手続のIT化の実現に向けて-」に関する意見書を発表した。同日付けで、最高裁判所長官、法務大臣および法制審議会会長宛てにも提出した。


「裁判所へのアクセスを拡充し、審理を充実させ、適正かつ迅速な紛争解決を図るための手段として、裁判手続等のIT化が重要な課題の一つである」との見解に立ち、「IT化を推進すべきである」として、IT化に理解を示している。
一方で、裁判を受ける権利や裁判の諸原則との整合性の担保、民事裁判手続等における審理の在り方の再検証、情報セキュリティの確保、プライバシーや営業秘密の保護、IT機器を保有しない者や取扱いに詳しくない者に配慮した手続や支援制度の構築などの実施が、必要であるとの認識を示した。 裁判を受ける権利について、「民事裁判手続等IT化研究会報告書」では、任意のオンライン申立てからはじめ、ITの浸透度や事件管理システムのIT環境などの事情を考慮した上で、「士業者のオンライン申立て義務化」「一般を含めたオンライン申立ての原則義務化」と段階的に進む考えを示している。 対して、日弁連は、オンライン申立ての義務化について、書面による申立てを認めないと、高齢者や経済的弱者などIT機器未所持者や習熟していない人の「裁判を受ける権利を侵害し、司法アクセスを後退させるおそれがある」と指摘。「相当の期間は書面による申立てを併存させるべき」との見解を示している。 事件管理システムの使いやすさや安定性・信頼性の確保や、 研修などを通じて弁護士がシステムに習熟したことなどを前提に「まずは訴訟代理人についてのみ、オンライン申立てを義務化すべき」とする。 また、情報セキュリティに関して、「民事裁判手続等IT化研究会報告書」では、裁判所に、オンラインシステムによる簡易な訴状などの書面の送達方法を設けて、書面がアップロードされたら、事前に登録された電子メール等のアドレスに通知したい考えを示している。 対して、日弁連は、なりすまり防止のために、確実な本人確認の方法の検討を求めているほか、「IT機器の使用が困難な者や、その取り扱いに習熟しない者がいるため、送達書面を全てシステム送達で行うのではなく、送達システムに登録または届出をした当事者の利用に限定するべき」との見解を示している。 また、日弁連は、裁判等のIT化による判所支部の統廃合など司法過疎を拡大する方向の議論や、非弁活動の温床になる危険性についても懸念を示す。 司法過疎については、内閣官房による「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ(2018年3月)」では、「e提出(主張証拠のオンライン提出等)、e法廷(ウェブ会議・テレビ会議の導入・拡大等)、e事件管理(訴訟記録への随時オンラインアクセス等)」などの導入を前提として「裁判手続の利便性が全体として向上する」との期待感を示す。 対して、日弁連は、裁判所へのアクセス拡充に対して理解を示した上で、「裁判所支部の統廃合など司法過疎を拡大する方向での議論は厳に慎まれるべきである」に懸念を示している。 非弁活動の温床になる危険性については、内閣官房による「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ(2018年3月)」によると、IT面のサポート策について、弁護士などが代理権等の範囲の中で所属団体の対応枠組みを使うことや、既存の各種相談機関や法テラス等の活用することを想定している。 対して、日弁連は意見書で、非弁活動防止策の記載もなく、法テラス等に対するITサポートに当てられる予算額も不明なため、非弁活動の温床となる危険性を指摘した上で、「(非弁活動のような)弊害を生じさせない制度の設計も必要となる」との懸念を示している。 意見書の全文は、日本弁護士連合会(日弁連)のホームページで確認できる。 日本弁護士連合会(日弁連) 該当ページ 意見書の全文

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