産休・育休を理由にした不利益な扱いはできない
女性従業員が妊娠した場合、会社は必ず産休を与えなければなりません。
育休は、制度を利用できる条件を満たしている従業員であれば、女性だけでなく、父親となる男性従業員にも与えなければなりません。
産休や育休を申請したり、利用したりしたことを理由に、従業員に対して解雇や減給、降格など、不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。
違反した場合は、行政から指導や勧告を受ける場合があります。さらに、勧告に従わなかった場合は、会社名を公表される可能性があります。
産休は全ての女性従業員に与えなければならない
産休は全ての女性従業員に与えなければなりません。
正社員だけでなく、パートタイムや派遣社員、契約社員として働く女性も対象です。
産休の期間
産休には、出産前の「産前休業」と、出産後の「産後休業」があります。
それぞれの休業の期間について説明します。
産前休業の期間
産前休業は、出産予定日の6週間前(妊娠34週)からです。 6週間以内に出産する予定の従業員が休業を請求した場合、働かせることができません。 双子など多胎妊娠の場合には、予定日の14週間前(妊娠26週)からです。 また、従業員が早く休業するように医師から指導を受けた場合は、会社は指導の内容に従った措置を講じる必要があります。
従業員が、医師からの指導内容が記載された「母性健康管理指導事項連絡カード」(母健連絡カード)を提出する場合があります。カードを受け取ったら、記載された指導内容を確認しましょう。
産後休業の期間
産後休業は、原則として、出産の翌日から8週間です。 産前休業とは異なり、従業員が請求していなくても、働かせることができません。 ただし、従業員が早期の復帰を希望し、医師が復帰を認めている場合は、産後休業が6週間に短縮されます。
希望する従業員には育休を与えなければならない
会社は、原則として子どもが1歳になるまでの間、従業員が希望する期間の育児休業(育休)を与えなければなりません。
育休は女性従業員だけでなく、父親になる男性従業員も対象です。
育休の対象外になる従業員
育休は、全ての従業員が対象になる制度ではありません。 雇用契約の内容によって、育休の対象外になる従業員もいます。 たとえば、雇用契約の内容が「1日単位で雇用される」ことになっている従業員(日々雇用契約)は、育休の対象外です。 また、労使協定を結ぶことで、次のような場合に当てはまる従業員を、育休の対象外にすることができます。
- 雇用されてから1年未満の場合
- 1年以内(1歳以降の休業の場合は、6か月以内)に雇用関係が終了する場合
- 週の所定労働日数が2日以下の場合
パート・派遣・契約社員も育休の対象になる場合がある
パートタイムや、派遣社員、契約社員として働いている従業員も、雇用契約に期間の定めがない場合、育休の対象です。 また、雇用契約に期間の定めがあっても、次の条件を満たす場合は、育休の対象です
- 育休を申請する時点で同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
- 子どもが1歳6か月(2歳まで休業する場合は2歳)を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
育休の期間
女性従業員の育休期間は、産後休業(原則として産後8週間)が終わってから、子どもが1歳になるまでの間です。
1年間ずっと休むのではなく、従業員が任意の期間を選びます。
父親も育休を取得した場合は育休期間が1歳2か月に延長される(パパママ育休プラス)
父親になる男性従業員も育休を取得し、次の条件に当てはまる場合、母親の育休期間は、子どもが1歳2か月になるまでに延長されます。「パパママ育休プラス」という制度です。
- 母親の育休より先に、父親が育休を開始する
- 子どもが1歳になるまでに父親が育休を取得する
- 子どもの1歳の誕生日以前に母親が育休を開始する
たとえば、従業員がパパママ育休プラスを利用し、1歳以降に母親が休む場合、次の図のようになります。
育休が最長で2歳まで延長される場合がある
従業員に次のような事情がある場合、子どもが1歳6か月まで、育休期間が延長されます。
- 子どもが1歳になる日に、母親と父親のどちらかが育休中で、次のどちらかの事情がある場合(パパママ育休プラスを使って1歳以降に育休を取得している場合には育休終了予定日が基準)
- 子どもが保育園に入れない場合
- 1歳以降の子育てを主に父親がする予定だったが、父親の病気・ケガ・死亡などにより子育てが困難になった場合
子どもが1歳6か月の時点で、同様の事情が続いている場合は、育休期間がさらに2歳まで延長されます。
従業員が育休を2回利用するケースがある
育休の利用は、原則として子ども1人につき1回です。 ただし、次のような場合に、従業員は育休を2回利用できます。
- 出産後に妊娠をして育休中に新たな産休・育休に入った場合で、新たな産休・育休の対象となる子どもが亡くなるなどした場合
- 育休中に介護休業が開始したことにより育休が終了した場合で、介護をする家族が亡くなるなどした場合
- 父親が亡くなった場合
- 父親の病気、ケガ、障害により子育てが困難となった場合
- 離婚などで父親が子どもと別居することになった場合
- 子どもが病気、ケガ、障害により2週間以上の世話を必要とする場合
- 保育園に入れない場合