業務外の病気やケガで休みを求められたら就業規則を確認
業務外で病気にかかったり、ケガをしたりした従業員に対し、休暇を与えなければならないという法律上の決まりはありません。
ただし、会社の就業規則に「休職」に関する規定がある場合は、規則の内容に従って休みを与えなければなりません。
従業員から休暇を求められた場合は、休職を導入しているかどうかについて、就業規則を確認しましょう。
休職を導入していない場合
休職は必ず導入しなければならない制度ではありません。 従業員が安心して働ける環境を作りたいと考えているような場合は、福利厚生の一環として、休職の導入を検討してもよいでしょう。 休職を導入する場合は、以下のような点を定めておきましょう。
- 休職の条件
- 休職期間
- 休職中の賃金の取扱い
- 職場に復帰(復職)の手続き
- 復職できない場合の対応
上記の点は、会社が独自に定めることができます。 たとえば、休職中は賃金を支払わないというルールや、休職期間が終わっても復職できない場合は退職させるというルールなども可能です。 休職制度をどのように導入すればよいか不安な場合は、弁護士などの専門家に相談することを検討しましょう。
休職中の従業員は健康保険から補償を受けられる
業務外の病気やケガで休職している従業員に対し、賃金を支払う必要はありません。
一定の条件を満たす従業員には、健康保険から最長で1年6か月にわたって賃金の一部が支給されます。「傷病手当金」といいます。
「傷病手当金」は、休職した従業員自身が申請や手続きを行います。
申請書には事業主が記入する部分があるので、従業員から記入を求められたら応じるようにしましょう。
傷病手当金を受給できる条件や1日あたりの金額の計算方法などは、会社が加入している健康保険によって異なる場合があります。
中小企業が主に加入している健康保険組合である全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、以下のようになっています。
補償の対象者
協会けんぽの場合、傷病手当金を受給できるのは、以下の全ての条件に当てはまる人です。
- 業務外の病気やケガを理由に仕事を休んでいて、給料の支払いを受けていない人
- 1を理由に仕事ができない状況だと医師から診断された人
- 連続して3日以上仕事を休んでいる人(4日目から傷病手当金の対象となります)
休職中に会社から給料が支払われる場合は、傷病手当金を受給できません。ただし、給料の額が傷病手当金より少ない場合は、その差額を受給できます。
金額の目安
たとえば、協会けんぽの場合、傷病手当金の1日あたりの金額は、以下のように計算します。
【傷病手当金の支給が始まった日以前の直近12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額】 ÷ 30日 × 2/3
標準報酬月額とは、簡単にいえば、社会保険料を計算するために用いる金額のことです。金額は都道府県別に定められています。
協会けんぽの各都道府県の標準報酬月額については、協会けんぽのホームページで確認することができます。
たとえば、東京都の場合、実際の月給が25万円以上27万円未満なら、標準報酬月額は26万円です。
傷病手当金を計算するときは、まず、傷病手当金が最初に支給された日の属する月を含めた直近12か月間の標準報酬月額を平均します。
それを30で割って「標準報酬日額」とします。標準報酬日額の3分の2が、傷病手当金として支払われます。
標準報酬月額の平均が26万円の場合、標準報酬日額は8667円です。傷病手当金はその3分の2で、1日あたり5778円が支給されます。
以下の図のように、支給開始日直近12か月間の標準報酬月額に変動がある場合は、次のように計算します(30日で割ったときに1の位を四捨五入します)。
(24万円×2か月+26万円×10か月) ÷ 12か月 ÷ 30日 × 2/3 = 5704円 / 日
病気やケガを理由に従業員を解雇したい場合
病気やケガで勤務が難しくなった従業員を、休職期間が終わるタイミングで解雇したいと考えるケースもあるでしょう。
しかし、病気やケガを理由に会社が従業員を解雇するためには、法律などで厳しい条件が決められています。
病気やケガを理由にした解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。