取締役の責任とその範囲とは【弁護士Q&A】

取締役が会社に損害を与えた場合、どのような責任を負うことになるのでしょうか。 また、取締役としての地位にいても、実質的には何ら取締役としての権限が与えられていないような場合でも、会社に損害が発生した場合は責任を負うことになるのでしょうか。 「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. 取締役の責任とは
  2. 名ばかりの取締役でも責任を負うのか

取締役の責任とは

取締役は、どのような場合に、どんな責任を負うのでしょうか。

取締役の責任はどこまでありますか?

取締役の責任はどこまでありますか? 取締役をしていますが、退任・退職を考えています。

申し入れたところ、現在の担当事業での不振や社員の退職が全て私の責任なので、訴訟すると言われています。当然、担当取締役の責任はあるものの、事業不振で損害賠償を求められるものでしょうか?ちなみに上場企業です。

正直、嫌がらせで訴訟される可能性もあります。

辻 真也の写真 弁護士の回答辻 真也弁護士 >事業不振で損害賠償を求められるものでしょうか?

→原則として、損害賠償義務を負いません。

取締役は、その「任務を怠ったとき」には、会社に対して損害賠償義務を負います(会社法423条1項)。

「任務を怠ったとき」とは、大要、

・法令に違反した行為をしたときと、
・善管注意義務(会社法330条、民法644条)に違反したとき

をいいます。

ご相談のケースでは、善管注意義務違反かどうかが問題になるものと思います。

もっとも、会社経営にはリスクがつきものであり、結果として事業が不振に陥ったとしても、

①経営判断の前提となる事実認識の過程(情報収集とその分析・検討)に不注意な誤りがある場合か、

②当該事実認識に基づいてなされた意思決定の過程が著しく不合理である場合

でない限り、善管注意義務違反とはなりません(経営判断の原則)。

ご相談のケースでは、嫌がらせで訴訟される可能性自体は否定できませんが、仮に訴訟提起されたとしても、①又は②の事情がない限り、ご相談者は会社に対して損害賠償義務を負いません。

取締役の責任はどこまでありますか? ちなみに退職・辞任を申し入れた直後、一方的に減給・降格をされる可能性(前例あり)があり、そちらも不当と考えますが、いかがでしょうか?

辻 真也の写真 弁護士の回答辻 真也弁護士 1.降格について

ご相談の「降格」が、役付の取締役から平取締役への変更ということであれば、
・取締役会で決議可能な事項であること
・降格事由があること(>現在の担当事業での不振や社員の退職が全て私の責任)
から、問題ないものと思います。

他方、ご相談の「降格」が、取締役から従業員への変更ということであれば、
・取締役の解任は株主総会の決議事項であること(会社法339条1項)
から、株主総会決議を経ない限り、問題があります。

2.減給について

問題があります。

取締役の報酬は、株主総会決議(及びその後の取締役会決議)により一旦具体的に定められた場合、会社と取締役間の委任契約の内容となり、取締役が減額に同意しない限り、取締役会決議又は株主総会決議で一方的に減額できないからです(最判平成4年12月18日民集第46巻9号3006頁参照)。

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名ばかりの取締役でも責任を負うのか

取締役としての地位にいても、実質的には何ら取締役としての権限が与えられていないような場合でも、取締役としての責任を負うのでしょうか。

取締役の責任範囲について

取締役の責任範囲について 小さな会社で取締役をしております。社長は創業者であり、会社の株を全て所有しています。私は連帯保証人にも全くなっておらず、また、一円も出資しておりません。

社長はまさにワンマン経営で、全て自分で決定しており、「全責任は自分が背負う」と話しております。

私含め社員にはお金の流れを全く開示せず、毎月の売り上げ、経費、その他もろもろが全くわからず、何にお金がかかってるのか全くわからない状況です。

私の方で経費の精査をしますかと提案しましたが、不要と言われました。おそらくですが、私的にお金を使っているのがばれてしまうからだと思ってます。

こんな状況で、仮にも会社が破綻した場合、取締役である私に損害賠償責任などは発生する可能性はあるのでしょうか?

鐘ケ江 啓司の写真 弁護士の回答鐘ケ江 啓司弁護士 ありえます。名目的取締役であっても責任を負うという裁判例は多数あり、むしろそういった代表取締役の監督をしなかった、ということで監督義務懈怠(けたい)といわれることがあります(会社法429条)。

弁護士に相談して辞任交渉をされるべきです。

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