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公開日:

秘密保持契約書に違反した場合の「損害」の範囲

2011年11月01日
社員20名のネット企業の役員です。

ビジネスの世界では、業務提携や取引の交渉開始に先立って、秘密保持契約書(NDA)を結ぶことが多いと思います。

このNDAですが、当社の中長期戦略や業績といった重要情報を相手会社に対して開示した場合、
万が一、相手会社がこうした情報を他の企業に開示したり、自社で悪用した際には、
NDA違反として損害賠償の対象になるという理解で容易でしょうか?

また、損害賠償の対象になる場合には、その際の「損害」はどうやって算定するのでしょうか?

抽象的な質問で恐縮ですが、NDA違反の場合の「損害」の範囲について、いまひとつイメージしにくいので、一般的な考え方をわかりやすく教えて頂けると助かります。

重要情報を開示した際のリスクや対応策をシミュレーションしたいと考えた次第です。

よろしくお願い致します。
相談者(320713)の相談

みんなの回答

楠 啓太郎 弁護士
ベストアンサー
ありがとう
NDAの中で秘密情報の他の企業への開示や目的外使用を禁止しており、相手会社がこれに違反すれば、契約違反に基づく損害賠償を請求することができます。

とは言え、「損害」を立証するのは容易ではありません。NDA違反により自社の売り上げが減少した、といった因果関係が明らかな場合であればいいのですが、実際には因果関係が明確でない場合がほとんどです。

そこで、予めNDAの中で、契約違反があった場合の損害賠償額を予定しておくことが望ましいと言えます。

なお、相手会社の行為が、不正競争防止法違反に該当するような場合(例えば、同法第2条第1項第7号の「不正の利益を得る目的で、又は営業秘密の保有者に損害を加える目的」での営業秘密の使用又は開示)には、「損害額の推定」(同法第5条)により損害額の立証がしやすくなる場合もあります。

2011年11月02日 02時40分

岡田 晃朝
岡田 晃朝 弁護士
弁護士ランキング 登録弁護士が過去30日における弁護士ドットコム内で行った活動(みんなの法律相談での回答など)を独自に数値化、ランキングしたものです。 兵庫県1 企業法務・顧問弁護士に注力する弁護士
ありがとう
通常は、そのような契約には、損害賠償額の予定を定めておきます。

その理由は1点は、洩らされた側の利益のため。他の先生の言われるように立証の問題です。

もう一つは、洩らした企業の利益のため。洩らした企業が受け取っている報酬に比べて、受け取る秘密の価値が高い場合、あらかじめこれを定めることで、予測外の莫大な請求が発生しないようにです。


予定賠償額は、金額を固定明示する以外に、報酬の何%、何年分といった定め方もありますが、これは後者を理由にします。

2011年11月02日 08時30分

森崎 秀昭
森崎 秀昭 弁護士
ありがとう
他の先生方のコメントのように、損害賠償額又はその算定方法を予め定めておくようにするのが一般的です。

その際に、どのような金額や算定方法でも良いわけではありません。

あまりに不当な金額や算定方法の場合には、裁判所で無効だと判断されかねません。
(例えば、100万円のビジネスに関して締結したNDAで、1000兆円の損害賠償額であるとか、継続的な契約で100年間継続することで得られるべきであった対価相当額とか。)

そこで、契約内容や御社の情報が陳腐化するまでに相当と考えられる期間などに応じて合理的に説明可能な金額又は算定方法にしていただければと存じます。

2011年11月02日 09時38分

瀬戸 仲男
瀬戸 仲男 弁護士
ありがとう
上記の先生方がご指摘の通り、損害賠償額の予定を定めておく方法が有効です。これは「額」に関する紛争防止策ですね。

違う視点として、「情報の管理」に関して、次のような規定を設けておく方法はいかがでしょうか。
即ち、①双方が自社の「情報管理責任者」(具体的な個人、例えば総務課長など)を定めておくこと、②互いに情報管理の状況について報告する義務(報告を求める権利)があること、③責任者を変更した場合は速やかに(例えば「5日以内に文書で」)相手方に通知すること、などの点です。
このような管理責任者の定めを設けることにより、いい加減な情報管理を抑止する効果が期待できますね。

情報漏洩の点は、各先生方がご指摘なさっていらっしゃるとおり、立証が困難な問題です(それだからこそ、不心得者が故意に漏洩する可能性が生ずるのかもしれません)が、参考にしてください。

2011年11月02日 12時57分

相談者(320713)
楠先生、岡田先生、森崎先生、瀬戸先生

迅速なアドバイスありがとうございます!

・合理的な損害賠償額をあらかじめ設定しておく
・情報管理責任者を置く

いずれのポイントも分かりやすく、素人の私でもよく理解できました。

今後はこのような提案をNDAを結ぶ際には意識したいと思います。

非常に勉強になりました。かさねて御礼申し上げます。

2011年11月02日 14時40分

比護 望
比護 望 弁護士
弁護士ランキング 登録弁護士が過去30日における弁護士ドットコム内で行った活動(みんなの法律相談での回答など)を独自に数値化、ランキングしたものです。 愛知県2
ありがとう
損害額に立証が難しいものであるのみならず、そもそも、秘密保持契約に違反する事実があったかどうかの立証も難しいものです。

参考に知財高裁平成20・6・24の判断を紹介します。

本件営業秘密中の営業に関する情報のうち,契約条件や商品別販売手数料率・利益率などの情報は,契約の当事者により変動するものであり,また,原告は既にカードレスプリペイドサービス事業を開始しているのに対し,被告は事業への参入の可否を検討している段階であって状況が異なることや,原告と被告とでは,会社の規模,経営状態,経済的環境,顧客との関係,事業展開の予定等において大きく異なるなどの諸事情を考慮すると,原告の販売実績や商品別の利益率,コンビニエンスストアチェーンとの交渉状況などの情報は,それ自体が,被告にとって,マーケティング分析を行う際に,常に必要な情報であるとまで解することはできない。
 上記の事実,及び被告が,既に,カードレス方式ではないもののプリペイドサービス事業を実施して,ある程度の知識経験を持っていたものと考えられることに照らすならば,原告から本件営業秘密の開示を受けたEが本件被告サービスの開始に携わることによって,原告の販売実績や商品別の利益率・コンビニエンスストアチェーンとの交渉状況などを知ったとしても,そのような情報を活用することなく,マーケティング分析を行うことは十分あり得るといえる。したがって,原告の主張は採用することができない。また,被告が原告から開示された営業秘密のうち,どの部分をどのように使用したかについていずれも具体的な主張立証があるとはいえない以上,被告が本件営業秘密を本件被告サービスのために使用したと認めることはできない。
 さらに,乙5の1,2及び弁論の全趣旨によれば,弁理士による鑑定の対象となったイ号システム,ロ号システムは,POSレジを用いたプリペイドサービスの構成の概要を抽象的に示したにとどまるものであり,その内容に照らすと,当業者であれば,その作成にはそれほど多くの時間を要しないものであると認められ,平成16年12月の時点で上記のイ号システム,ロ号システムが作成されていたとしても,そのことから,イ号システム,ロ号システムや,本件被告サービスに実際に使用されたシステムの作成のために本件営業秘密が使用されたものと認めることはできない。

2011年11月03日 10時25分

比護 望
比護 望 弁護士
弁護士ランキング 登録弁護士が過去30日における弁護士ドットコム内で行った活動(みんなの法律相談での回答など)を独自に数値化、ランキングしたものです。 愛知県2
ありがとう
上記の秘密保持契約の違反の事実の立証の困難を軽減するためにも、個別具体的な事項を客観的に秘密と言えないと判断されるおそれのある要素のものであっても秘密事項とみなす条項を定めたり、定型的な一定の取引を行った場合には、当該秘密事項を用いたものとみなす条項を定めたりして、そうした立証、判断のリスクを軽減させる対策も考えられます。

金額だけに注意が行きがちですが、秘密保持事項に違反した事実の立証のリスク、判断のリスクを軽減する対策も重要です。
仮に裁判で認定が得られなくても、事前の威嚇的効果は、損害賠償の予定とあいまって、相当高まると思います。

訴訟では、金額の争点に行く前に秘密保持事項には違反していない、秘密にあたらない、その秘密事項は使っていないという抗弁が必ず出る、と思って、十分な備えをなさって下さい。

2011年11月03日 10時34分

この投稿は、2011年11月時点の情報です。
ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

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