刑務所で相次ぐコロナ「クラスター」発生…受刑者は「面会できなくてつらい」「感染が不安」
クラスターが発生した横浜刑務所の塀(RewSite / PIXTA)

刑務所で相次ぐコロナ「クラスター」発生…受刑者は「面会できなくてつらい」「感染が不安」

全国の少年院や刑務所などの矯正施設で新型コロナウイルスの感染者が確認されている。

法務省矯正局によると、矯正施設において1月25日までに確認できている感染者数は職員90人、被収容者146人だという。その多くは、クラスター(感染者集団)が発生した横浜刑務所や千葉刑務所だとみられる。

函館少年刑務所でもクラスターが発生したほか、東京拘置所や沖縄刑務所などでも感染者が確認されている。

感染者が出た矯正施設はいま、どのような状況になっているのだろうか。

●クラスターが発生した刑務所では刑務作業は「中止」

職員あるいは被収容者が感染した場合の対応策については、「矯正施設における新型コロナウイルス感染症感染防止対策ガイドライン」にまとめられている。同ガイドラインには、「他施設の職員の応援勤務も含めた業務継続方策の検討・実施」「感染した被収容者の患者隔離エリア(汚染区域)における隔離」などをおこなう旨が書かれている。

矯正局の担当者によると、現段階ではガイドラインにそった対応がおこなわれており、施設運営に支障は生じていないという。

とはいえ、これまでどおりに運営することは困難だ。クラスターが発生した横浜刑務所や千葉刑務所では刑務作業は中止しているという。

また、横浜刑務所では面会も原則として実施しないことになっている。千葉刑務所も、感染が確認された受刑者との面会は原則中止のようだ。ただし、ほかの矯正施設では、通常どおり面会は実施しているという。

●コロナ感染への不安、面会できないつらさを語る受刑者も

受刑者や出所者の支援をおこなうNPOマザーハウスには、「PCR検査で陰性だったが、ほかの刑務所に移送された」「同じ刑務所内で感染者が出た」など、現状を伝える内容のほか、コロナ感染に対する不安を綴った手紙が届くこともあるという。

理事長の五十嵐弘志さんは「ほとんどの刑務所では、医療体制は整っているとはいえません。高齢者が多い刑務所もあります。受刑者たちは不安で仕方がないと思います」と話す。

感染者の隔離は必要だ。しかし、コロナ感染防止を理由に面会が困難になっている状況について、受刑者から「これまでのように面会ができなくなり、つらい」という内容の手紙が届いたこともあったという。

「面会は『命』そのものだといえます。自分の気持ちは面会の場でしか話せません。受刑者はいずれ社会に戻ってきます。社会の人との交流がなければ、彼らが立ち直り、『回復』していくことは難しいと思います」(五十嵐さん)

そこで、五十嵐さんは「zoomやテレビ電話を用いた『オンライン面会』を導入するよい機会なのでは」と提案する。

●「オンライン面会」弁護人や親族等にもメリット

実際に、矯正施設によってはテレビ電話を使った打ち合わせなどができるようだ。コロナの感染が拡大する前に刑務所を出所した男性(40代)は「被告人だったときに弁護人とテレビ電話で裁判の打ち合わせをしたことがある」と話す。

大阪弁護士会に所属している泉田健司弁護士によると、弁護士が大阪弁護士会館に出向けば、大阪拘置所に収容されている人とのテレビ接見ができるそうだ。

大阪弁護士会館 大阪弁護士会館(ましゃいこ / PIXTA)

ところが、接見できる対象施設は大阪拘置所に限られており、時間も20分と短いという。

「昨年の緊急事態宣言下ではかなり活用されたようです。しかし、大阪弁護士会館と大阪拘置所はさほど遠くはなく、面会時間も短いため、それなら直接会いに行こうとなる人が多いように思います」(泉田弁護士)

泉田弁護士は「一般社会でもオンライン化はまだまだで、病院や高齢者施設でもオンライン面談の導入は不十分」であるとし、矯正施設のオンライン化を実現するにはまだ時間がかかる可能性があるとみている。

ただ、オンライン化により、次のようなメリットがあると語る。

「(1)弁護士にとって弁護活動の充実につながること、(2)親族等との面会が容易になることにより、被収容者の心情の安定・更生に資すること、(3)オンライン診療による医療の充実などのメリットが考えられます。もちろん、面会者の事前登録とパスワード発行、身分証のオンライン提示、事前予約制と予約枠による制限などの工夫が必要だと思います」

●コロナを理由に面会ができない場合は代替手段を

矯正施設でもオンライン化がすすめば、面会以外の点でもメリットはありそうだ。

完全なオンライン化を導入するのは、すぐには難しいかもしれない。しかし、被収容者やその家族などがコロナを理由に面会ができない場合については、テレビ電話やオンラインでの対応を活用するなどの代替手段を検討する必要があるだろう。

神奈川県弁護士会は1月28日、「横浜刑務所における新型コロナウイルス集団感染を受けての会長声明」を出し、「我が国では諸外国に比べ、『電話連絡』(電話等による通信。テレビ電話、ビデオ通信等を含む。)が受刑者のごく一部にしか認められていない。感染拡大防止のためにやむを得ず面会を制限する場合には、電話連絡などの代替手段を柔軟に活用することを求める」などとしている。

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