騒乱罪・多衆不解散罪はどのような犯罪かl罪が成立する要件と刑罰の内容

ひとつの場所に集団で集まって周囲に暴力行為をしたりモノを破壊したりすると、騒乱罪という犯罪にあたる可能性があります。 そうした集団が、警察官から解散するよう求められて従わないと、さらに、多衆不解散罪という犯罪にあたる可能性があります。 この記事では、騒乱罪と多衆不解散罪がそれぞれどのような犯罪なのか解説します。

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目次

  1. 騒乱罪・多衆不解散罪とは
  2. 騒乱罪が成立する要件
    1. 「多衆で集合して」とは
    2. 暴行・脅迫とは
    3. 暴行・脅迫の程度
    4. 平穏を害するとは
    5. 共同意思
    6. どのような立場で騒乱に参加したかで刑の重さが変わる
  3. 多衆不解散罪が成立する要件
    1. (1)「暴行又は脅迫をするために多衆が集合した場合」
    2. (2)「権限ある公務員」
    3. (3)「解散命令を3回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったとき」
  4. 騒乱罪・多衆不解散罪の刑罰
    1. 騒乱罪の刑罰
    2. 多衆不解散罪の刑罰

騒乱罪・多衆不解散罪とは

騒乱罪とは、ある地域に集団で集まって、暴力行為をしたり脅したりするなどして、地域の平穏を乱すことです。 そのような集団が、警察官から、解散するよう、3回以上命令を受けたにもかかわらず解散しなかった場合は、多衆不解散罪という犯罪が成立します。

騒乱罪が成立する要件

騒乱罪は、「多衆で集合して」「暴行または脅迫」をした場合に成立します。

「多衆で集合して」とは

大勢の人が集団で集まることです。どの程度で大勢の集団なのか明確な定義はありませんが、約30名の集団を「多衆」と認定した裁判例もあります。 多衆といえるかどうかは、人数だけではなく、集団を構成する人の性別や年齢、職業、凶器の有無や種類、集合している場所や日時など様々な事情を考慮して判断されます。 集団は、組織化されたものだけではなく、偶然その場に居合わせた人で構成された場合も含みます。

暴行・脅迫とは

暴行とは、人やモノに不法な有形力を加える行為のことです。具体的には、殴ったりモノを破壊したりする行為のほか、体を押さえつけたり、衣服を引っ張ったりする行為も暴行にあたります。 警察署に侵入し占拠したことが暴行にあたるとして、騒乱罪の成立を認めた判例があります。 脅迫とは、相手の生命や身体などに害を加えることを伝える行為です。

暴行・脅迫の程度

騒乱罪における暴行・脅迫は、判例で「一地方の平穏を害するに足りる程度」である必要があります。つまり、単に暴行脅迫行為があっただけではなく、それが「一地方の平穏を害するに足りる程度」でなければ、騒乱罪は成立しないということです。 どの程度の規模で「一地方」なのか、明確な定義はありませんが、新宿駅とその一帯が「一地方」にあたるとして、騒乱罪の成立を認めたケースがあります。

平穏を害するとは

どのような状態が「平穏を害する」状態といえるのか、明確な定義はありませんが、裁判例では、新宿駅内外を埋め尽くした群衆が、警察部隊や停車中の電車に激しく投石したり、警視庁のテレビ中継車に放火したりするなどして、警察官約590名を負傷させたほか、多数の電車の運行を止めたりしたケースについて、「一地方における公共の平和、静謐(せいひつ)を現実に阻害した」として、騒乱罪の成立を認めています。

共同意思

騒乱罪が成立するには、単に多くの人が集まっただけでなく、集まった人に「共同意思」があることが必要だと考えられています。 簡単に言えば、大勢の人がそれぞれの力を利用して、共同して暴行・脅迫を加えようとする意思です。 ただし、その場にいる全員が厳密に意思の連絡をとっていることまでは求められておらず、大多数の人が認識していれば共同意思があると考えてよいとされています。 たとえば、集団を構成する人のうち、暴動をただ傍観するなど共同意思がない人が一部いたとしても、大部分の人が共同意思を持っていれば、その集団全体に共同意思があったと認められるとする裁判例などがあります。

どのような立場で騒乱に参加したかで刑の重さが変わる

騒乱罪は、「首謀者」「指揮者・率先助勢者」「付和随行者」のうち、どの立場で暴動に参加したかによって、刑罰の内容が変わってきます。

首謀者とは

主導者として暴動を計画するなどした人のことです。自ら現場で暴力行為などをしていない人や、暴動の現場にいない人でも、首謀者と認定される場合があります。 首謀者は1人とは限りません。また、首謀者がいなくても騒乱罪が成立する可能性があります。

指揮者・率先助勢者とは

指揮者とは、暴動の際に、集団の全員もしくは一部に対して、指示や命令をする人のことです。 率先助勢者とは、自ら率先して、騒乱を勢いづけた人のことです。裁判例では、集団に対して、デモを行うことを指示・激励したうえ、プラカードの柄の先を竹槍状に尖らせたものを渡して暴動に参加させた行為について、率先助勢にあたるとしたケースがあります。

付和随行者とは

暴動に加わった人のうち、首謀者・指揮者・率先助勢者にあたらない人のことです。 自ら暴行・脅迫をしていない人でも、付和随行者とみなされる場合があります。たとえば、暴動を単に傍観するだけではなく、暴動をおこしている人たちに声援を送ったりした場合です。

多衆不解散罪が成立する要件

多衆不解散罪は、(1)「暴行又は脅迫をするために多衆が集合した場合」に、(2)「権限ある公務員」から、(3)「解散の命令を3回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったとき」に成立します。

(1)「暴行又は脅迫をするために多衆が集合した場合」

騒乱罪と同じです。

(2)「権限ある公務員」

一般的には、警察官がこれにあたります。

(3)「解散命令を3回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったとき」

文書や口頭など、形式は問われません。首謀者だけではなく、集まった集団の全体が間接的にでも解散命令を知る必要があります。

騒乱罪・多衆不解散罪の刑罰

騒乱罪の刑罰

騒乱罪の刑罰は、どのような立場で暴動に参加したかによって変わってきます。 刑罰が最も重いのは暴動を計画した首謀者で、1年以上10年以下の懲役か禁錮です。 暴動を指揮したり、集団を率先して勢いづけた人の刑罰は、6か月以上7年以下の懲役か禁錮です。 首謀者・指揮者・率先助勢者以外の立場で暴動に参加した人の刑罰は、10万円以下の罰金です。

多衆不解散罪の刑罰

多衆不解散罪の刑罰は、首謀者は3年以下の懲役か禁錮、その他の人は10万円以下の罰金です。

多衆不解散罪の首謀者は、解散しないことについて主導的な役割をした人のことを指し、騒乱罪の首謀者とは必ずしも一致しません。

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