緊急避難とは|緊急避難が認められる要件を解説

自分が溺れないために、他の人が持っている浮き輪を奪ってその人を溺れ死なせてしまうなど、自分や誰かの身の安全や命を守るために、他の誰かを犠牲にするようなケースは、法的には、「緊急避難」を理由に犯罪にあたらない可能性があります。

  • 緊急避難とは
  • 緊急避難が成立した場合の効果
  • 緊急避難が成立するための要件

この記事では、これらのポイントについて詳しく解説します。

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目次

  1. 「緊急避難」とは
    1. 正当防衛との違い
  2. 緊急避難が認められる要件
    1. 自分や他人の生命や身体、自由、財産に対する現在の危難を避けるため
    2. やむを得ずにした
    3. 危難によって生じる害の程度より、危難を避けようとしたことで生じた害の程度の方が小さい
  3. 裁判で緊急避難が認められた場合

「緊急避難」とは

迫っている危険から、自分や誰かの身の安全や命を守るために、やむを得ず他人や他人の物に害を与えてしまった場合は、緊急避難として犯罪が成立しないことがあります。 たとえば、暴漢におそわれそうになったため、他人の家に承諾を得ないで逃げ込んだようなケースです。他人の家に無断で入る行為は、一般的には住居侵入罪にあたりますが、緊急避難が認められれば、違法性がないという理由で犯罪が成立しません。 ただし、緊急避難が認められるためにはいくつかの条件を満たす必要があります。それぞれを確認していきましょう。

正当防衛との違い

緊急避難と似たものに正当防衛があります。 正当防衛は、簡単に説明すると、不正(違法)な侵害に対する反撃は、形式的には犯罪行為にあたるようなことであっても、違法性がないという理由で犯罪が成立しないことです。 これに対して、冒頭にあげた溺れないために浮き輪を奪い取るようなケースでは、奪い取られた側が侵害行為をしていたわけではありません。 つまり、緊急避難は、何も悪くない人やモノに危害を加えて、その結果、自分や人の身の安全などを守るというものです。 このように、正当防衛は「正VS不正(違法)」の関係にあるのに対して、緊急避難は「正VS正」の関係にあります。 そのため、緊急避難が認められる条件は、正当防衛に比べて要件が厳しく設定されています。

緊急避難が認められる要件

緊急避難が認められるためには、次の要件を全て満たす必要があります。

  • 自分や他人の生命や身体、自由、財産に対する現在の危難を避けるためであること
  • やむを得ずにした行為だったこと
  • 危難によって生じる害の程度より、危難を避けようとしたことで生じた害の程度の方が小さい

消防士や警察官、自衛官、水防団員、船長など、業務の性質上、一定の危険に身を晒さなければならない義務がある人は、原則として、緊急避難が認められません。

自分や他人の生命や身体、自由、財産に対する現在の危難を避けるため

「現在の危難」に対して、自分や他人の生命や身体、自由、財産を守るために避難しようとする意思があることです。 「現在の危難」とは、現実に生命や身体、自由、財産が侵害されている状態や、侵害が差し迫っている状態のことです。 危難は、人の不正(違法)な行為が原因である必要はありません。動物や自然災害などが原因で、危難が生じている場合でも、緊急避難が認められます。

やむを得ずにした

現在の危難から避難するために、他に取ることができる現実的な手段がなかったことが必要です。

危難によって生じる害の程度より、危難を避けようとしたことで生じた害の程度の方が小さい

現在の危難によって生じると考えられる害の程度よりも、危難を避けようとして他人や他人の物に与えた害の程度の方が小さいことが必要です。 暴漢におそわれそうになったため、他人の家に承諾を得ないで逃げ込むようなケースで考えてみましょう。 暴漢におそわれることで生じる害より、承諾を得ずに他人の家に入ることで生じる害の方が小さいと認められれば、緊急避難が成立します。 他人や他人の物に生じさせた害の程度の方が大きい場合は、緊急避難が成立しない可能性があります。 ただし、「過剰避難」として、通常よりも刑罰が軽くなる可能性があります。

裁判で緊急避難が認められた場合

刑事裁判では、犯罪があったことを証明する責任を検察官が負いますが、緊急避難は、反対に、犯罪ではなかったことを証明する事実です。 そのため、被告人の側に「緊急避難であったかもしれない」と裁判官に気づかせる程度の立証活動を、証拠などを提出しておこなう必要があります。 裁判で緊急避難が認められると、無罪の判決が言い渡されます。 「過剰避難」になった場合は、犯罪が成立しますが、裁判官の判断により、通常よりも刑罰が軽くなる可能性があります。

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