
医師や弁護士などが秘密を漏らした場合の罪|秘密漏示罪が成立する要件と刑罰の内容
医師や薬剤師、弁護士など、特定の職業の人が、仕事上で知った秘密を漏らすと、「秘密漏示」にあたる場合があります。
- 秘密漏示罪とは
- 秘密漏示罪が成立する要件
- 刑罰の重さ
この記事では、これらのポイントについて、詳しく解説します。
「秘密漏示罪」とは
医師や薬剤師・弁護士など、特定の職業の人が、仕事上で知った秘密を漏らすと、「秘密漏示」にあたる場合があります。
秘密漏示罪が成立する要件
秘密漏示罪が成立する要件は、医師や薬剤師、弁護士など特定の職業についている人が、「正当な理由」がないのに、「業務で知った人の秘密」を「漏らす」ことです。
被害者などが処罰を求めなければ、起訴されることはありません(親告罪)。
対象となる職業
この罪の主体になるのは、次の職業についている人です(過去にこれらの職業についていた人も含みます)。
- 医師・歯科医師
- 薬剤師
- 医薬品販売業者
- 助産師
- 弁護士・弁護人(弁護士以外で弁護人になった「特別弁護人」)
- 公証人
- 宗教職(神官や僧侶、牧師、神父など)・祈祷師
「業務で知った人の秘密」とは
「業務で知った人の秘密」とは、仕事の中で知った人の秘密のことです。 秘密には、業務者自身が行った調査などで知った事柄だけでなく、本人が自ら打ち明けた事柄も含まれます。 「人」は、個人だけでなく、会社などの団体も含まれます。死者や解散した団体は含まれません。 また、「秘密」とは、少数者にしか知られていない事実で、他人に知られることが本人の不利益になることです。 特定の範囲の人に知られていても、一般的に知られていないければ、「秘密」に含まれます。
「漏らす」とは
「漏らす」とは、秘密の内容を知らない人に伝えることです。 秘密を伝えるときに、他の人に言うことを禁止した場合でも、漏らしたことになります。 漏らす方法には、直接口頭で伝えたり、書面で伝えたりするなど、様々な手段が含まれます。 また、患者の秘密が記載されたカルテを、他人が読める状態で放置するなど、積極的に伝える方法でなくても、漏らしたことあたります。
「正当な理由」とは
人の秘密を漏らす行為に、「正当な理由」があれば、秘密漏示罪は成立しません。 法律などで、報告や告知などが義務付けられている事項を報告・告知するようなケースは、「正当な理由」があることにあたります。 たとえば、医師は、法律で指定された感染症にかかった患者の年齢や性別などを、都道府県知事に届け出ることが法律で義務付けられているため、これらの事項を報告しても、秘密漏示罪にはあたりません。 また、本人が同意している場合も、「正当な理由」あることに含まれます。
秘密漏示罪の刑罰
秘密漏示罪の刑罰は、6か月以下の懲役か10万円以下の罰金です。