
保護責任者遺棄罪はどのような罪か|罪が成立する要件と刑罰の重さ
高齢者を介護する人や、子どもの保護者、病気の人を看病する人などを、被害者を保護する責任がある人が、食事を与えなかったり、治療を受けさせなかったりすると「保護責任者遺棄罪」にあたる可能性があります。
- 保護責任者遺棄罪とは
- 保護責任者遺棄罪が成立する要件
- 刑罰の重さ
この記事では、これらのポイントについて詳しく解説します。
目次
「保護責任者遺棄罪」とは
高齢者や子ども、病気の人などを、保護する責任がある人が、食事を与えなかったり、治療を受けさせなかったりすると「保護責任者遺棄罪」にあたる可能性があります。
保護責任者遺棄罪が成立する要件
保護責任者遺棄罪が成立する要件は、「高齢者や子ども、身体に障がいがある人、病気の人を保護する責任がある人」が、これらの人を「遺棄する」または「生存に必要な保護をしない」ことです。
「高齢者や子ども、身体に障がいがある人、病気の人を保護する責任がある人」とは
「保護する責任」があるかどうかは、法令の規定や契約、慣習など、様々な根拠から決まります。 過去の裁判では、次のような人に「保護する責任」があると認められています。
- 養子縁組が成立する前に、養子として幼児を引き取った人
- 従業員と同居している雇用主
- 引き取る義務がないのに、病気の人を引き取った人
「遺棄」とは
「遺棄」とは、被害者を安全な場所から危険な場所に移動させることや、被害者が危険な場所にいるのにそのまま放置することなどを意味します。 過去の裁判では、次のような行為を「遺棄」と認めました。
- 交通事故を起こし、被害者を自動車に乗せて事故現場を離れたが、被害者を雪が降る薄暗い車道に放置した
- 病気により日常生活が困難な妻を残して夫が失踪した
- 母親が2歳から14歳までの実子4人を他に養育者がいないにもかかわらず自宅に置き去りにした
「生存に必要な保護をしない」とは
「生存に必要な保護をしない」とは、子どもに食事を与えなかったり、病気の人やケガ人に必要な治療を受けさせなかったりするなど、被害者が生存するために必要な行為をしないことです。 過去の裁判では、次のような行為を「生存に必要な保護をしなかった」と認めました。
- 2歳の養子に十分な食事を与えることなどをしなかった
- 病気で体が不自由な65歳の親に適切な食事を与えることなどをしなかった
- 衰弱し、凍傷や骨折により日常の動作ができない子どもに医師の治療を受けさせなかった
保護責任者遺棄罪の刑罰
保護責任者遺棄罪の刑罰は、3か月以上5年以下の懲役です。 遺棄により被害者に傷害を負わせたり、死亡させたりした場合は、刑罰が重くなります。 被害者に傷害を負わせた場合の刑罰は、3か月以上15年以下の懲役です。 死亡させた場合の刑罰は、3年以上の懲役です。