強制執行の回避について

慰謝料をいつまでに払うという公正証書を作成したのですが、支払い期限より前に、相手側から、「支払いの件はチャラにしてやる」と言われ、払わずにいました。
ところが、支払い期限を3年経過してから、「まだ払われていないから、払え」と連絡がきました。
「払わなくていいと言った」というと、「ただの口約束」と言われ、払わないなら強制執行すると言われました。

強制執行してもいいという記述のある公正証書の場合、いきなり会社に来て給料の差し押さえをされると聞いたのですが、回避する方法はないのでしょうか?
払わなくていいと言われたから払わなかっただけなのに、期限が過ぎてから請求するなど、詐欺のようなものじゃないでしょうか?
でゅーでゅーさん
2015年03月21日 23時25分

みんなの回答

櫻町 直樹
櫻町 直樹 弁護士
ありがとう
ピーちゃん 様

 「強制執行してもいいという記述のある公正証書」が作成されている場合は,裁判手続きによって判決を得るというステップをとばして,強制執行(給与差押え等)をすることができます。

 ただし,「支払いの件はチャラにしてやる」というのは,いわゆる「債権放棄」(法律上は「債務免除」といいます。民法519条)にあたりますので,たとえ上記のような公正証書があっても,既に請求権が消滅しており強制執行はできないということになります。

 しかしながら,相手方が強制執行をしようと思えば,債務免除したことを秘して手続きを進めること自体は可能ですので,相手方が強制執行の手続きを取らないよう前もって牽制しておく必要があると思われます。

 具体的には,相手方が「チャラにしてやる」と言ったのであれば,「債務免除をしたのに強制執行するのは,違法行為として損害賠償責任を負う可能性がある」と警告し,手続きを思いとどまらせるというのがよいでしょう。

 ただし,「チャラにしてやる」ということが書面で残っていなければ,債務免除を証明することはなかなか難しく,上記のような警告を無視して強制執行をしてくる可能性はゼロではありません。※口約束でも法的には有効です。

 そこで,支払期限から3年が経過しているということでしたら,慰謝料請求権は時効により消滅したという理由も付け加えるのがよいと思います。
 つまり,不法行為に基づく損害賠償請求権(慰謝料請求権)は,3年の経過により時効で消滅します(民法724条前段)ので,「仮に債務免除が証拠の関係で認められないとしても,支払期限から3年を経過したので時効により消滅(※)しており,強制執行はできない。にもかかわらず強制執行をするのは違法行為として損害賠償責任を負う可能性がある」というものです。
※ただし,不法行為に基づく損害賠償請求であっても,示談(和解)が成立した場合には時効期間が10年になるという考え方もあり,争いがあるところです。

 以上のとおり,債務免除・時効消滅のいずれを理由にするとしても,相手方が強制執行してくることを完全に抑えることは難しい面があります。
 どうしても強制執行は回避したいという場合には,強制執行は違法であると牽制しつつ,若干の金銭を支払って解決するというのが現実的な着地点かもしれません。

2015年03月22日 01時08分

でゅーでゅー さん (質問者)
早速のご回答、ありがとうございました。
「支払いはチャラにする」ということを言ったことを認めたと解釈できるメールはあります。

これを踏まえて、3点、追加で質問があります。

1.強制執行されなくても、請求は違法行為として、相手を訴えることは可能なのでしょうか?

2.もし強制執行された場合は、それを停止するにはどうしたらいいのでしょうか?

3.いくらかお金を払って事を治めた場合でも、再度請求されることが考えられます。
そうされないためには、どうしたらいいのでしょうか?

2015年03月22日 22時36分

櫻町 直樹
櫻町 直樹 弁護士
ベストアンサー
ありがとう
ピーちゃん 様

1 訴えること自体は可能です。
 もっとも,(債務免除によって)債権が消滅していることを認識しながら支払いを求めることは問題だとは思いますが,その態様が社会通念上許容できる限度を超えているような特段の事情がない限りは,損害賠償責任を負うほどの違法性は認められない(裁判手続きに訴えても,裁判所が損害賠償を認める可能性は低い)ように思います。

2 強制執行を停止するためには,法律に規定された強制執行を停止させるための文書を堤出する必要があります。具体的には,「民事執行法」という法律(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S54/S54HO004.html)の第39条1項に記載された文書になります。
 これらの文書を得るには,裁判(請求異議の訴え・強制執行停止の申立て等)をして勝訴する必要があります。※相手方が弁済を受けた旨が記載された文書も,強制執行を停止させることができますが,停止期間が4週間に限定されています。
 
3 支払いをするに際し,ピーちゃん様と相手方との間に(その支払い以外には)債権債務がないことを確認する旨の条項(いわゆる「清算条項」)などが記載された合意書(示談書)を取り交わすことになります。
※ピーちゃん様が,相手方から支払いを受ける予定があったり,相手方が何らかの義務を負っている場合には,問題となっている慰謝料についてのみ清算されたということを明らかにしておくため,「本件に関し」という限定をしておく必要があります。

 なお,ピーちゃん様が相手方から受け取ったメールが「「支払いはチャラにする」ということを言ったことを認めたと解釈できる」ものかどうか,強制執行をさせないためにどのような方策が適切か,また,和解するとしてどういった内容の示談書にすべきか等は,公正証書の文言を見たり,より具体的にご事情を確認したりする必要がありますので,お近くの弁護士にご相談されるのがよいと思います。

2015年03月23日 10時26分

でゅーでゅー さん (質問者)
丁寧なご説明、ありがとうございました。

2015年03月23日 22時58分

この投稿は、2015年03月21日時点の情報です。
ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

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