10月下旬、革マル系の大学生が逮捕されたというニュースがネットで話題になった。スポーツ報知によると、大学生は偽名で飛行機のチケットを申し込み、搭乗したとして、「私電磁的記録不正作出・同供用」の疑いを持たれているという。
「革マル」といえば、「中核」と並ぶ過激派左翼の代名詞として知られるが、全盛期は何十年も昔のこと。2013年の今、何のために偽名で飛行機に乗らなければならなかったのか……。
ふと考えると、電車やタクシーに乗る際に、名前を問われることはない。それなのに飛行機だと、本名で申し込まなければ「犯罪」になってしまうのだろうか。結婚して、普段使っている姓と戸籍の姓が違う場合などは、どうなるのだろうか。旅行法や航空法の実務にくわしい金子博人弁護士に聞いた。
●国際線は1文字の違いでもダメ!
同じ飛行機のチケットといっても、国際線と国内線の場合で違いがあるようだ。金子弁護士はまず、国際線のケースについて解説してくれた。
「海外旅行のために航空券を買う場合、パスポートの名前とスペルが一文字違うだけでも、買いなおすことになります。たとえば結婚して姓が変わった場合も、パスポートが旧姓のままだと、新しい姓では航空券を購入できないということになります」
なぜそんなに厳しいのだろうか。
「入国審査では、手元にある資料のみで、即時に人物の特定をする必要があります。したがって、航空券の名前とパスポートの名前が一致している必要があるのです。
この違いを他の資料で補って入国を認めるかどうかは、その国のルールで対処するので、入国を拒否されても文句は言えません」
こうした状況を避けるため、国際線では航空会社の段階でも、厳しくチェックが行われているようだ。
「航空会社も、航空券とパスポートの名前のスペルで照合し、人物を特定します。一文字でも違うと、搭乗券を発券してくれないのが普通です。他の資料を示して間違いだと説明しても、現場では判断しきれないため、通常は拒否されます。
航空会社にとっても、飛行の安全性から人物の特定は重要なので、この点の実務は厳格です。なお、IATA(国際航空運送協会)では、航空券の譲渡を禁止しているので、この点からも、人物の特定は重要となります」
●「人の事務処理を誤らせる目的」にあたるかどうか
一方、国内線ではどうだろうか。
「国内線の場合、話は別です。入国管理の問題がないので、運用はその国や各航空会社に任されています。日本では、職業上の名前や旧姓など、戸籍と違う名前で購入しても、チェックはないはずです」
それでは、なぜ今回の件は「逮捕」に至ったのだろうか。
「過激派の革マルの闘士としてマークされている女子大生が偽名を使って逮捕されたのは、単に偽名を使ったからではなく、『人の事務処理を誤らせる目的』で、電磁的記録を不正に作ったからです。
こうした行為なら、刑法161条の2で規定されている、電磁的記録不正作出および供与の罪に該当します。つまりは、当局のマークを逃れて、沖縄の闘争に参加しようとした、というのが前提の話でしょう」
このように金子弁護士は説明したうえで、次のように呼びかけていた。
「したがって、一般の人が、たとえば職業上の名前で国内線の航空券を購入しても、それだけで犯罪になることはありません。ご心配なく!」