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元恋人の裸写真をネットでばらまく「リベンジポルノ」 防止のために新法が必要?
日本には「リベンジポルノ」を防ぐ法律はあるのだろうか?

元恋人の裸写真をネットでばらまく「リベンジポルノ」 防止のために新法が必要?

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「リベンジポルノ」という言葉をネットで目にするようになった。もともとは英語で「復讐ポルノ」という意味だ。恋人や配偶者との関係が破たんした際、腹いせに以前、プライベートで撮ったわいせつな写真・動画などをばらまく、という行為を指すようだ。

米カリフォルニア州では10月、この「リベンジポルノ」を犯罪とする法律が成立した。もともと同州では、プライバシーを侵害する写真・動画などを無許可で撮影・公開すれば、犯罪とされていた。

新たにできた法律は、撮影自体には合意があっても、撮影時に「誰にも公開しない」という理解の上で撮られたプライベート写真などを、悪意を持って公開し、被写体に精神的苦痛を与えれば犯罪となる――という内容だ。

「この手の話」はアメリカだけでなく、日本でも問題となっている。日本には「リベンジポルノ」を防ぐ法律はあるのだろうか。それとも、同州のように新しい法律を作る必要があるのだろうか。インターネット上の誹謗中傷問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

●被写体が18歳未満ならば「児童ポルノ禁止法」違反

「日本には、米カリフォルニア州のような形でプライバシー侵害を処罰するような法律はありません。しかし、新しい法律を作らなくても現状の法律でも対処できる余地はあると思います」

清水弁護士はこのように指摘する。まず、「リベンジポルノ」の被写体が18歳未満の場合は、「児童ポルノ禁止法」に違反し、カリフォルニアで新しくできた法律よりも厳しい刑罰を受ける可能性があるという。

「18歳未満の裸体など《性欲を興奮させまたは刺激する》写真・動画をインターネット上に公開し、ばらまくといった行為は、児童買春・児童ポルノ禁止法により《5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科》とされています(同法7条4号)」

それでは、相手が大人の場合、どうだろう。

「対象が18歳以上であっても、わいせつ物頒布罪となる可能性があります。こちらは法定刑が《2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役と罰金の併科》とされています(刑法175条1項)。

また、写真の内容によっては名誉毀損罪(刑法230条1項。3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金)や侮辱罪(刑法231条。拘留または科料)が成立する余地もあると思います」

●リベンジポルノには「民事責任」も生じる

「さらに、プライベートな性的写真・動画は、自身の最大のプライバシーと言っても差し支えないと思います。それを勝手に公開した人に対しては、プライバシー権の侵害を理由に、民事裁判で損害賠償請求をしていくことも可能です」

清水弁護士はこのように述べたうえで、「リベンジポルノは、場合によっては犯罪となり得る行為です。この点が周知されれば事前に防ぐことができるかもしれません」と、犯罪抑止効果に期待する。

さらに、リベンジポルノを「拡散する人」についても、次のように警告を発していた。

「リベンジポルノは、公開した人以外の手によって、どんどん共有・拡散されていくことがしばしばあると思います。そのような拡散行為も問題となる可能性は十分あります。

『自分が公開したわけではない』と言い訳する人をよく見かけます。気持ちは分からないでもないですが、必ずしもそれだけで責任がないということにはなりません。安易に拡散に協力することは避けるべきでしょう」

こうしたリベンジポルノの被害を根本的に防ぐためには、「そもそも写真や動画を撮らない・撮らせない」しかないだろう。ただ、事件の一番の被害者がプライバシーを侵害された人であることは、きちんと認識しておくべきと言えそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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