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週刊文春「スクープ記事」のネット公開で逮捕 「発売前」と「発売後」で刑が違う?
雑誌の記事をネットで公開する行為は、発売前後で罪の重さに違いがあるのだろうか?

週刊文春「スクープ記事」のネット公開で逮捕 「発売前」と「発売後」で刑が違う?

AKB48メンバーの交際関係をめぐる『週刊文春』のスクープを、発売前にネットで公開した疑いで、運送会社のアルバイト従業員が逮捕された。報道によると、容疑者は全国に配送される雑誌配送の仕分け担当で、「ちょっとでも早く、人に記事を見せたかった」と、容疑を認めているという。

確かに、スクープ記事がウリの週刊誌にとって、発売前に記事が出回るのは致命的だ。容疑者が10月6日に逮捕されると、週刊文春は事件に関する記事をウェブサイトに掲載し、「(今回の著作権法違反は)10年以下の懲役刑、もしくは1000万円以下の罰金、または併科とされる重罪である」と強調している。

今回の逮捕容疑は「著作権法違反(公衆送信可能化権の侵害)」とされているが、もし公開したのが「発売後」なら、罪の重さに違いがあったりするのだろうか。著作権問題にくわしく、著作権をテーマにしたブログを運営している柿沼太一弁護士に聞いた。

●「発売後」でも著作権侵害になる

「週刊誌の記事は、発売されたか否かを問わず『著作物』として保護されます。

したがって、結論的には、雑誌の『発売後』であったとしても、記事を無断コピーしてネット上で公開した場合には、著作権侵害として刑事罰を科されたり、損害賠償請求等を受けたりすることには変わりありません」

柿沼弁護士はこのように指摘する。ただ、発売の前後で変化する点もあるようだ。

「本件のように、『発売前』の記事を無断複製・公開した場合には、著作権者が持つ権利のうち『複製権』『公衆送信権』に加えて、『公表権』(著作者人格権の一種)も侵害したことになります」

つまり、発売前だと侵害する「権利」の種類が増えるということだ。そのことは賠償額などに影響を与えるのだろうか?

●「発売前」の無断公開は損害がより大きい

「実質的に考えても、『発売前』に記事が無断コピー・公開された場合、その記事の価値が大幅に下落し、雑誌の売上も低下するでしょう。著作権者の被る損害は『発売後』の無断コピー・公開と比較して、より大きくなると思われます。

したがって、本件のような『発売前』の記事を無断コピーしてネット上で公開した場合、『発売後』の無断公開と比較して、刑事手続における厳罰化や、民事事件における損害賠償の増額につながると思われます」

やはり、刑罰の内容や損害賠償の額に、少なからず影響するようだ。写真を撮り、ネットに公開することが、誰でも簡単にできる時代。だからこそ、それがどんな事態を引き起こすことになるのかは、しっかりと認識しておく必要がありそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

柿沼 太一
柿沼 太一(かきぬま たいち)弁護士 STORIA法律事務所
兵庫県弁護士会所属。専門はスタートアップ(特にディープテック)法務、AI・データ関連法務、知的財産関係事務所サイトではAI、IT、知財、ベンチャー系企業に関する記事を多数掲載。

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