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自然の生態系を壊す「ブラックバス放流」 法律の規制はどうなっている?
外来種であるブラックバスを放流してよいのだろうか?

自然の生態系を壊す「ブラックバス放流」 法律の規制はどうなっている?

身勝手なブラックバスの放流に住民がカンカンだ。報道によると9月7日、三重県亀山市で、地元の市民グループや小中学生、農家の人たち約30人が、農業用ため池の水を抜く「池干し」を行った。ため池に増えた外来魚のブラックバスを駆除するためで、今回は約100匹が見つかったという。

この池では、2年前にも「池干し」を行ったが、その後も釣り人の姿が目撃されていた。そうした釣り人の中には「俺が放流した」と開き直る人もいたそうだ。

ブラックバスの放流について、法律の規定はどのようになっているのだろうか。日弁連の公害対策環境保全委員会・自然保護部会の部会長を務める後藤富和弁護士に聞いた。

●ブラックバスは芦ノ湖を皮切りに全国に広まった

「ブラックバスは北米原産の淡水魚で、もともとは日本にいない外来種です。戦前、芦ノ湖に持ち込まれたのを皮切りに、瞬く間に全国の湖沼に広がりました。ブラックバスは釣り上げるときの引きが強いため、釣り人に人気の魚です。釣り上げられたブラックバスは、食べられずに再放流(リリース)されていたため、どんどん増えました。

問題は、従来そこで暮らしていたフナやアユ、ワカサギなどの在来種が、食欲旺盛なブラックバスに駆逐されていったことです。ブラックバスだけが増えた結果、生態系のピラミッドはいびつな形となってしまいました」

後藤弁護士は、ブラックバスが問題化した背景をこう語る。それに対して、どのような対策が取られたのだろうか。

●05年施行の「特定外来生物法」で運搬や飼育が禁止された

「ブラックバスによる漁業被害が深刻化したため、2005年に施行された特定外来生物法によりブラックバスの運搬や飼育が禁止されました。

実際に、釣ったブラックバスを車で運んだ人が、特定外来生物法違反の容疑で逮捕されるという事件も起こっています。また、再放流を禁止する条例も各地で制定されるようになりました」

●食べたり飼料にしたり……法律以外に様々な「対策」が

なるほど、生態系を守るための法律は、すでにがっちりと準備されているようだ。ただ、いわゆるバス釣りを楽しむことは、注意点を守れば問題なく可能だ。たとえば釣ったバスを「食べる」ことはOKで、ネットでは調理法も公開されている。後藤弁護士もこう話す。

「最近では、ブラックバスを食べてもらおうと、フライにして提供する店もあります。また、回収ボックスを設置する自治体も多く、回収したブラックバスは家畜の飼料などに活用されています。ブラックバスに対し地域通貨を発行する実験も行われています」

このように、バス釣りを楽しみつつ、生態系を守るため、釣りファンらも様々な努力をしているようだ。そういった人たちにとっても、法律違反を犯す釣り人の存在は迷惑千万だろう。「もともとは人間が持ち込んだものです。生物多様性を保全するために、釣り上げたブラックバスはリリースしないこと、他の湖沼に移動させないことが重要です」。後藤弁護士はあらためて、こう強調していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

後藤 富和
後藤 富和(ごとう とみかず)弁護士 大橋法律事務所
福岡県弁護士会・公害環境委員会副委員長、日本弁護士連合会・公害対策環境保全委員会自然保護部会部会長、福岡大学法科大学院非常勤講師

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