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「取調べの全面可視化と証拠の全面開示を!」 冤罪被害者がネットで「署名活動」
冤罪の恐ろしさを訴える桜井昌司さん(中)と菅家利和さん(左)、川畑幸夫さん(右)

「取調べの全面可視化と証拠の全面開示を!」 冤罪被害者がネットで「署名活動」

布川事件と足利事件と志布志事件。3つの著名な冤罪事件の被害者である桜井昌司さんと菅家利和さん、川畑幸夫さんが9月9日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を行い、冤罪をなくすための司法制度改革の必要性を訴えた。この日の会見は、桜井さんがインターネットで、「取調べの全面可視化と証拠の全面開示」を求める署名活動を始めたのに合わせて開かれた。桜井さんは、自らの取調べの様子を語りながら、「冤罪をなくすために取調べの全面可視化を実現し、検察官の証拠独占を改善したい」とアピールした。

「無実の人間を検察官が平然と犯人と決め付けて、何も問題が起きない社会に怒りと失望を感じる」。桜井さんはこう憤りを露わにした。1967年に茨城県で起こった強盗殺人事件(布川事件)で犯人とされ、29年間を刑務所で過ごしたが、2011年に再審で無罪判決を勝ち取った。警察によって改ざんされたという捜査報告書のコピーを示しながら、「冤罪を体験した身として、あらゆる手段を使って、日本でも冤罪が生まれない司法を実現したい」と強い思いを語った。

●米国発の署名サイト「change.org」を活用

今回の署名活動は、取調べの全面可視化と、検察がもっている証拠を全面開示させるための制度を実現するため、賛同する人の署名を集めるもの。米国発の署名サイト「change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」のなかに専用ページを開いて、賛同者を募っている。集まった署名は、法務大臣と衆議院と参議院の法務委員会に提出する予定だ。

署名を集める場として「change.org」を活用している点について、桜井さんは「いろいろなケースを見るなかで、日本の中でやる限界を感じた。日本で起きていることを外国の方に知っていただくことも、日本を正す力になるのではないかと考えた」と、その狙いを語った。

取調べの可視化をめぐっては、厚労省官僚の村木厚子さんが無実の罪で逮捕・起訴された郵便不正事件などをきっかけに、その全面的な実現を求める声が高まった。だが法務大臣の諮問機関である法制審議会は「取り調べの録音・録画の実施は取調官の意思に任せる」と判断し、全面的な可視化は実現していない。また犯罪に関する証拠についても、検察・警察が独占的に管理していることが、冤罪の温床となっていると指摘する声がある。

記者会見には、桜井さんのほか、足利事件で犯人とされ17年半を刑務所で過ごした菅家利和さんと、志布志事件の冤罪被害者である川畑幸夫さんも同席した。川畑さんは自白を強要されるなかで行われた「踏み字」を再現した紙を持参し、取り調べの様子を語った。また逮捕当時のDNA鑑定が誤りであったことが判明し、冤罪だったことが確定した菅家さんは「警察や検察は今でも絶対に許せない」と繰り返し、自らを刑務所に送った捜査機関に対する怒りを露わにしていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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