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ツイッターが導入した「罵倒禁止」ルール 「どこまで実効性があるか疑問」と弁護士
ツイッターには日々、さまざま言葉が投稿されている

ツイッターが導入した「罵倒禁止」ルール 「どこまで実効性があるか疑問」と弁護士

ツイッター上での個人に対する罵倒や嫌がらせを禁止する――。ツイッター社は8月、特定の個人に向けた攻撃的なツイートを禁止することを発表した。今後、ユーザーによる通報システムなども整備していくという。

きっかけとなったのは、7月にイギリスで起こった女性活動家に対する脅迫事件だ。女性や、女性を擁護する人のツイッターアカウントに、「殺す」「レイプする」などの犯罪予告と見られる投稿や嫌がらせのツイートが殺到し、2人の逮捕者が出る騒ぎとなった。ユーザー側からも対策を求める12万件以上の署名が集まり、事態を重く見たツイッター社が規制導入を決めたのだった。

日本でも、ツイッター上での罵倒や嫌がらせは日常茶飯事だ。「特定の人物に向けた罵倒や嫌がらせ」を禁止する規定はこのほど日本でも導入されたが、これによってどんな影響があるのだろうか。インターネット上の法律問題にくわしい落合洋司弁護士に聞いた。

●「違反者のアカウントを停止しても、別のアカウントを取得されてしまう」

「日本でも、インターネット上のサービスが、利用規約で誹謗中傷や嫌がらせなどを禁止している例は、数多く見られます。しかし、実際には禁止規定があっても違反行為は後を絶ちません」

――どんな理由がある?

「主な要因は、インターネットにおける情報発信がとても容易であること。また、違反行為の再発防止に実効性が乏しいことにあるでしょう」

――再発防止が難しい?

「もう少し具体的に言うと、たとえば違反者のアカウントを停止しても、別のアカウントを次々と取得されてしまうということです。

クレジットカード課金の場合などを除き、アカウントを開設する際にしっかりとした本人確認を行っているサービスはあまり多くありません。規約違反をした人の再登録を防ぐのは難しいでしょう」

――確かに、登録が簡単なサービスは多い。

「ツイッターはメールアドレスだけで登録できるので、まさに典型的ですね。つまり、罵倒禁止の規定についても、現状ではどこまで実効性が期待できるかどうか疑問があります」

――実効性のある対策とは?

「たとえば、

(1)イギリスで検討されているユーザーによる通報システムを導入する。(問題のあるツイートの早期削除が可能になります)

(2)アカウント取得にあたり本人確認を行う。

(3)利用履歴(ログ)を確実に保存し、短期間では消去せず、権限のある当局の求めがあれば慎重に対応しつつ提出する。

などの方法が考えられます」

――ツイッター社はすぐにそういった対策をとったほうが良い?

「慎重な検討が必要でしょう。そういった措置は、利用の自由を制約することにもつながるからです」

サービスの根幹に関わる問題だけに、事業者側の苦悩は深そうだ。ただ、罵倒や中傷、脅迫などは、そもそも「犯罪」になり得る行為だ。ネット上だからといって、発言の重みが変わるわけではない。利用にあたってはもう一度、そこに思いを巡らす必要があるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

落合 洋司
落合 洋司(おちあい ようじ)弁護士 高輪共同法律事務所
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。

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