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高齢者が結んだ「葬儀や墓」の契約 「遺族」があとで解除できるか
国民生活センターには、「終活」がらみの相談が数多く寄せられているという

高齢者が結んだ「葬儀や墓」の契約 「遺族」があとで解除できるか

人生の最期を迎えるにあたって、その準備を整えておこうという「終活」の動きが広がっている。あらかじめ遺骨を山や海に散骨するように指定したり、自己の葬儀や墓などの手配を生前に済ませておこうとするものだ。遺品の整理などについて説明する「終活フェア」が開催されるほどだ。

一方で、葬儀や墓など終活にかんする商品やサービスは、高額なものが多いため、最近はブームに目を付けて、法外な請求をする悪質な業者が増えているようだ。国民生活センターによると、「自分の葬儀を事前契約したが、解約したい」といった終活がらみの相談が数多く寄せられているという。

なかには、判断力が低下した高齢者が、業者のセールストークにのせられて契約してしまうケースもあるとみられる。では、もしも高齢者が、不当に高額な葬儀や墓の契約を結んでしまっていた場合、本人の死後に、遺族が解約することはできるのだろうか。魚谷隆英弁護士に聞いた。

●判断能力を失った高齢者が結んだ契約は「無効」を主張できる

一口に、高齢者が葬儀や墓の契約を結ぶといっても、そのときの高齢者の判断能力や契約時の状況はさまざまだ。魚谷弁護士は3つの場合に分けて、次のように説明する。

「まず、高齢者本人が契約した時点で、すでに判断能力を失っていたような場合が考えられます。その場合、法的には、自己の行為の結果を認識・判断する能力(=意思能力)がなかったといえ、その契約は無効と主張できる可能性があります。本人が契約をした時点ですでに無効なので、遺族からも無効を主張することができます」

次に、本人の判断能力がそこまで低下していなくても、「業者が、契約内容の重要な事項について事実と異なることを告げていたり、本人の判断能力が低下していることに乗じて詐欺的な方法で契約させていたりする場合」が考えられるという。

「このような場合には、消費者契約法や民法の規定により、契約を取消して解約することが考えられます。また、もともと本人が有していた取消権を、遺族が行使することもできるでしょう」

●日頃から「高齢者の希望」を把握しておくことが大切

しかし、高齢者本人の判断能力がしっかりしていて、内容をきちんと理解して契約していたという場合も当然、想定される。そのような場合には、「遺族が契約を解約することは難しくなります」と魚谷弁護士は指摘する。そのうえで、高齢者の家族に対して、次のようなアドバイスをしている。

「高齢の方は、周りに迷惑をかけたくないという気持ちから、家族に自分の希望を伝えない場合も多いようです。日頃から家族でよく話をして、本人がどういう希望をもっているのかを把握しておくことが大切でしょう。必要に応じて、成年後見のように本人を保護する制度の利用を考えることも大切です」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

魚谷 隆英
魚谷 隆英(うおや たかひで)弁護士 うおや総合法律事務所
2001年弁護士登録。2011年に独立し、うおや総合法律事務所開設。企業関係の裁判、保険法務、倒産事件等を主に扱う。日本マンション学会会員で、暮らしに密接した分野の相談にも積極的に取り組んでいる。

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