誰が子どもを育てるのか――。離婚で大きな問題になるのが、子どもの親権を夫と妻のどちらがもつかということだ。通常は、妻のほうが子育てに関与している割合が大きいことから、妻に親権が帰属することが多い。
だが、それは妻の側が不倫していた場合でも同じなのだろうか。
たとえば、長年、夫婦関係が悪く、夫が妻に暴力をふるっていたため、それに耐えかねた妻が別の男性と不倫関係に陥ったとする。一方で、妻は専業主婦として10年以上、子育てに専念しており、子どもも「離婚したら、お母さんについていきたい」と言っている。
こんなケースで、不倫してしまった妻は、親権を手にすることはできないのだろうか。離婚問題にくわしい佐々木未緒弁護士に聞いた。
●親権の決定においては「現状維持」が優先される
「親権の判断は、『子の福祉』が重視されます。すなわち、『子どもにとって、何が一番よいか』という点が重要なのです」
このように佐々木弁護士は、親権決定のポイントについて、ズバリ指摘する。
「子どもの立場にたって考えてみると、これまで主に自分の世話をしてくれて、一緒にいる時間が長かった親と一緒にいるほうが安心できる、ということになりますよね。そのため裁判所では、虐待などの問題が特にないかぎり、『現状維持』をさせます」
つまり、親権の決定においては、子の福祉の観点から「現状維持」が優先されるということだ。では、今回のケースはどうだろうか。
●不倫したかどうかと、親権をどちらがもつかは、別問題
「今回のケースでは、夫婦仲が悪かったり、夫が妻に暴力を振るったりしているので、不倫をされても仕方のないところがありますが、もし何の落ち度もなく不倫をされた場合だったら、『不倫をするような母親に子どもを預けておくことなんてできるか!』『踏んだり蹴ったりじゃないか!』と腹立たしいことでしょう。しかし残念ながら、不倫の有無に関係なく、主に子育てをしていた親のほうが、親権者として認められやすいという現状があります」
すなわち、不倫をしたからといって、親権がとれないというわけではないのだ。基本的に、不倫したかどうかと、親権がどちらにいくかは別問題ということだ。
「お子さんの立場にたってみれば、親が不倫をしているなんてことはわかりませんし、いつも十分な愛情を与えて育ててくれているのであれば、その親とは離れたくないと思うでしょう。全く新しい環境で、暮らさなければならないことは辛いですからね」