愛娘の交際相手を殴って車に乗せ、脅して逃げられないようにしたとして、滋賀県の40代の男が逮捕監禁の疑いで逮捕された。
産経新聞によると、男は7月20日午前9時ごろ、中学1年生の娘が、交際している高校1年生の男子生徒と一緒に歩いているのを見て激高し、男子生徒を殴ったうえ、髪の毛を引っ張って乗用車の後部座席に押し込んだ。さらに「爪を全部むしり取るぞ」などと脅しながら車を走行させ、約50分間、逃げられない状態にした疑いが持たれている。
監禁というと、建物の一室に閉じ込めて外に出られないようにする、というような状況を思い浮かべるが、車に押し込めて走行するというのも「逮捕監禁」に当たるのだろうか。大和幸四郎弁護士に聞いた。
●入浴中の女性の衣類を持ち去ることも「監禁」
大和弁護士は、逮捕監禁罪(刑法220条)が成立するには、「監禁」にあたる行為が必要として、次の様に説明する。
「『監禁』とは、一定の場所より脱出することを不能または著しく困難にすることによって、人の行動の自由を侵害することをいいます。その手段・方法を問わないとするのが判例です。
『監禁』の場合、脱出を著しく困難にすることは必ずしも有形的・物理的方法によることを要しません。恐怖心や羞恥心を利用する無形的・心理的な方法による場合も含まれます。
たとえば、無理に自動車や原付自転車に乗せて疾走する場合や入浴中の女性の衣類を持ち去るような場合も監禁にあたります」
●車内に人を押し込め走行することも「監禁」
建物内に人を押し込めることに限らず、人の行動の自由を侵害すれば、広く「監禁」にあたるということだが、大和弁護士は、今回の事件について、次のように説明する。
「車に押し込めて走行することは、恐怖心を利用して、自動車内という一定の場所から脱出することを不能または著しく困難にすることによって、娘と交際している高校1年生の男子生徒の行動の自由を侵害していると認められます。よって、本件では『監禁罪』が成立します」
監禁という文字だけみると、今回の逮捕容疑は少しイメージしにくいが、どんな理由があっても、人の行動の自由を侵害する行為は、刑事責任を問われるものと知っておきたい。