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10代に広がる「薬物汚染」 高校生が所持したら、どんな処分を受ける?
未成年の「薬物汚染」を伝えるニュースは後を絶たない

10代に広がる「薬物汚染」 高校生が所持したら、どんな処分を受ける?

未成年の「薬物汚染」を伝えるニュースが後を絶たない。6月28日も福岡県の男子高校生(17)が大麻所持容疑で警察に逮捕されたと報じられている。

報道によると、事件が発覚したきっかけは、この生徒がコンビニのトイレに財布を落としたことだった。警察が調べたところ、ポリ袋入りの乾燥大麻0.5グラムが、学生証などと一緒に財布の中に入っていたという。

裏を返せば、高校生がそんな無防備ともいえる形で、違法な薬物を持ち歩いていたということだ。同年代の子を持つ親なら多少の差はあれ、「我が子は大丈夫だろうか」と心配になるだろう。もし子の部屋やカバンから、薬物らしきものを発見したらどうすべきか――。

子どもがこれ以上薬物の泥沼に沈んで行かないためにも、警察に届け、専門家の手に委ねるべきなのは明白だ。だが子が罪に問われると思うと、ためらうのもまた親心。はたして、この事件のように初犯の高校生が大麻を所持・使用していた場合、どのくらいの罪に問われるのだろうか。少年犯罪にくわしい東敦子弁護士に聞いた。

●初犯の少年の薬物所持・使用は「保護観察」で終わる可能性が高い

「今回、逮捕されたのは高校生(少年)ですし、営利目的での所持なども考えにくいので、成人と同じように刑事裁判で懲役刑などの刑罰を受けるということはほぼありません」

少年事件を取り扱った経験が豊富な東弁護士は言う。逮捕された少年にはどんな手続が待っているのか?

「少年が逮捕されると、一般的には10日間ほど勾留され、家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所は、『観護措置』決定を出すことが多いですね」

「観護措置」とは、家庭裁判所が調査を行うため少年の身体を確保することをいう。この観護措置を行うために設置されている施設が「少年鑑別所」だ。

「『観護措置』が決まった場合には、少年は少年鑑別所で約3週間過ごし、心理テストや、調査官による面談を受けます。このとき、弁護士も少年の生活環境の改善を行う『環境調整』や『更生』の支援を行うことができます」

それでは最終的に家庭裁判所でどういう処分が下されるのか?

「初めて所持のケースであれば、『保護観察処分』となり、自宅に戻れるのが普通です。この場合、保護司の指導を受けながら一般社会の中で更生を続けていきます。一方、非行を繰り返していたのであれば、『少年院送致』の可能性が高まります。これは覚せい剤でもシンナーでもほぼ同様です」

●警察以外にもある相談窓口

もし、子供が薬物を持っているのを見つけたら、親はどういう態度で臨むべきなのだろうか?

「自分の子が薬物を持っていたら、早い段階で向き合うのが大切です。『薬物に依存してしまう要因は何か』、『本人や家族が抱えている問題は何か』を探して回復を目指しましょう。警察以外にも相談できるところや、回復のための機関はありますよ」

具体的にはどういうところがあるのか?

「行政の機関としては、都道府県や政令市が運営する『精神保健福祉センター』が相談窓口となってくれます。また薬物依存者の自助グループがあり、『ダルク』や『ナラノン』といった名称で全国的に活動しています。当事者だけでなく、家族会もあるので心強いです。『病院を紹介して』と言われることも多いのですが、薬物依存の治療に取り組む医療機関は少ないのが実情です」

とにかく、「見て見ぬふり」は一番いけないこと。気づいたらすぐに専門機関に相談するのが良いようだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

東 敦子
東 敦子(ひがし あつこ)弁護士 黒崎合同法律事務所
福岡県弁護士会北九州部会所属。NPO法人北九州ダルク監事。北九州精神保健福祉審議会委員。

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