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会社に黙って「自転車通勤」したら、 どんな法的リスクがあるの?
春から夏に変わろうとする季節は、自転車に乗るには最適なシーズンだろう

会社に黙って「自転車通勤」したら、 どんな法的リスクがあるの?

春から夏に変わろうとする季節、とくに風薫る5月は、自転車に乗るには最適なシーズンとなるだろう。最近では、レジャーとしてだけではなく、自転車で通勤する人も増えているという。たしかに都心部でも、スーツ姿のサラリーマンが自転車に乗っているところを見かけることが多くなった気がする。

自転車通勤するのは、単に「自転車に乗るのが好きだから」という理由ばかりではないだろう。誰かに腹のたるみを指摘されたのかもしれないし、環境に配慮したのかもしれない。あるいは、交通費を節約するのが目的かもしれない。いずれにせよ、満員電車に乗らずに済むなんて、ぜいたくなライフスタイルだろう。

そんな自転車通勤だが、会社が率先して推奨しているケースはそれほど多くないと聞く。「自転車通勤」の届け出を求められる場合もあるだろう。では、仮に、会社に無断で自転車通勤したとしたら、どのようなリスクや不利益が発生するのだろうか。池田毅弁護士に聞いた。

●「定期代を浮かせよう」と会社に無断で自転車通勤した場合

まず、定期代などの「交通費」を浮かせようとして、会社に無断で自転車通勤したら、どうなるのだろうか。

「通勤方法や経路については、就業規則などによってルール化されている会社が多いでしょう。その場合は、事前に届け出ている通勤方法にしたがって、電車の定期代など交通費の支給も受けていると思います。

ところが、たとえば『電車通勤』と届け出ているのに、自転車通勤をするような場合は、本来不要な交通費を会社から不正に受給していることになるので、会社に知られると懲戒の対象となってしまいます。その期間や金額にもよりますが、重い処分も十分想定されます」

つまり、会社に届けた交通手段を使わずに自転車通勤をして、交通費を受け取っていると、あとでバレたときに、会社から重い処分が下されるリスクがあると言えそうだ。

●会社に無断で自転車通勤して、事故にあった場合

会社に黙ったまま自転車で通勤していたとして、もし事故にあったらとしたらどうなるのだろう。通勤途中だから「労災」は認定されるのだろうか。

「この場合であっても、通勤途上で自分がケガをしたときには、原則として、通勤災害として労災認定はされることが多いでしょう。しかし、実際に通ったルートなどによっては、『合理的な経路ではない』として労災認定されないリスクも考えられます」

労災認定はされる可能性は大きいようだが、されないリスクもあるようだ。では、自転車通勤をしている本人が、ほかの人を巻き込むような事故を起こしてしまった場合はどうだろうか。

「事故を起こして第三者にケガをさせてしまった場合には、加害者として被害者に対して、その損害を賠償する責任があります。これは、自転車通勤を会社に届けていても同様です。

自転車の事故であっても被害者が重傷を負う危険性はあるので、その賠償の金額は何千万円に及ぶこともあります。そのため、自ら保険に加入することを考えた方が良いでしょう。

なお、被害者は会社に対しても損害の賠償を請求することができる場合も考えられますが、仮にそれが認められて会社が被害者に対して賠償したとしても、無断に自転車で通勤していたということであれば、会社がその従業員に対して支払った分を返せと請求(求償)されることも十分ありえます」

多少、手続きは面倒くさいかもしれないが、その後のリスクを考えると、会社にきちんと届けるか相談してから自転車通勤を検討したほうがよいと言えそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

池田 毅
池田 毅(いけだ たけし)弁護士 東京つばさ法律事務所
現在、(公財)日弁連交通事故相談センタ-本部嘱託や、裁判所の公職などを務める。得意案件は交通事故のほか、相続問題、不動産取引、離婚事件、少年事件など。

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