新卒の就職活動で、多くの学生が意識せざるをえないのが、自分の「学歴」だ。その学歴をめぐる書き込みが、ネットの掲示板で注目を集めた。自称「低学歴」の男子大学生が、「早稲田大学(上位学部)」と学歴を偽って就活を行い、メガバンクと大手メーカーの2社から内定をゲットしたというのだ。
この大学生は、早稲田大学のインカレサークルに入っていたこともあって、自分の学歴の話題について綿密に作り込み、プレエントリーの時点から、すべて早稲田大学の学生という設定で通したそうだ。ただ、内定先にはいずれ、卒業予定証明書を送る必要があるので、そのときに「学歴はウソだった」と人事部に告げるつもりだという。
まるで小説のような話で、真偽は不明だが、このような「学歴詐称」が企業にばれた場合、「内定」が取り消される可能性はあるのだろうか。労働問題にくわしい河野祥多弁護士に聞いた。
●一方的な「内定取り消し」は認めらない場合がある
「内定といえども、労働契約の成立となります。したがって、内定通知書などに取消事由が明記されていて、それに該当する場合でも、企業による一方的な『内定取り消し』は、慎重になる必要があります」
このように河野弁護士は説明する。
「判例では、内定取り消しが許されるのは、(1)会社側が採用内定の当時に知ることができない、または知ることが期待できない事実が後に判明し、しかも、(2)それにより内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と認められる場合に限る、としています」
今回のケースは、内定取り消しになりうるのだろうか。
「学歴詐称は『提出書類の虚偽記入』にあたり、(1)は満たす場合が多いでしょう。次に(2)について考えてみましょう。
(2)については、虚偽記入の内容・程度が重大なもので、信義を欠くようなものでなければ、採用内定を取り消せません。
この点、業務内容にもよりますが、学歴詐称という事実は、その内容・程度が重大なもので、信義を欠くものとして、原則として『内定取り消し』が認められる場合が多いでしょう」
最後に河野弁護士は、就活性へエールを送った。
「学歴に頼りたくなる気持ちもわかりますが、堂々と自分の強みをアピールして、看板に頼らずに、自分の人生を切り開いていく気持ちを大切にしてもらいたいと思います」