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ドイツ大企業「女性役員を30%以上に」法律で義務化ーー日本でも実現するか?
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ドイツ大企業「女性役員を30%以上に」法律で義務化ーー日本でも実現するか?

ドイツ連邦議会は3月上旬、大企業の監査役会の「女性役員」の比率を30%以上にすることを義務づける法案を賛成多数で可決した。2016年から約100社が義務づけの対象となり、自動車大手のフォルクスワーゲンやドイツ銀行などが含まれる見通しだ。

報道によると、ドイツでは監査役会が企業の最高意思決定機関の役割を果たすが、2014年末の大企業200社の監査役会の女性比率は18.4%だった。今回の義務づけ法案の可決を受けて、シュウェーズィヒ児童家庭相は「歴史的な一歩」と評しているという。

日本でも、安倍首相が「女性の活躍」を掲げているが、ドイツと同じような「義務づけ」が実現する可能性はあるのだろうか。労働問題にくわしい中村新弁護士に聞いた。

●女性を「社外役員」に含めることは比較的容易に

「ドイツをはじめとする欧米諸国と日本では、会社の意思決定や運営・管理をおこなう『機関』の構成が異なります。

なので、ここでは広く、大企業の役員(取締役、監査役、執行役員)における女性の比率、または数について、考えてみたいと思います」

中村新弁護士はこう切り出したうえで、日本の状況について次のように説明する。

「日本の場合、1985年に男女雇用機会均等法が制定されました(施行は1986年)。

ただ、募集・採用や配置・昇進に関する男女の均等待遇は、1997年の法改正(1999年4月施行)まで努力義務にとどまっていたので、一般論として、管理職従業員に占める女性の割合は未だに高いとは言えません。

したがって、『原則として、役員を管理職従業員から選任する』という以前の形態であれば、大企業の役員における女性の割合や数について、一定の指針を設けることがまだ難しかったかもしれません」

現在はどのように変化してきているのだろうか。

「最近では、取締役と監査役について、社外から一定数を登用する企業が増えています。会社法改正も、大企業に社外監査役・社外取締役の登用を促す方向で進められています。

社外役員であれば、社外の有識者から広く候補者を選定できるので、その中に女性を含めることも比較的容易です。

●女性役員を登用する社会的基盤はできつつある

さらに中村弁護士は、1999年の改正男女雇用機会均等法の施行後の変化について説明する。

「男性と同じように、第一線で働く女性従業員の数は確実に増加しています。

したがって、企業の円滑な経営を実現するため、女性従業員の声を広く拾い上げて経営に反映させる必要性も増しています。役員に女性を積極的に登用する社会的基盤はできつつあると言えるでしょう」

では、日本でも、女性役員を一定割合あるいは一定数以上、登用することを義務づける制度が実現するだろうか。

「現状では、女性役員数が欧米諸国と比べてまだまだ少ないので、ただちに義務づけることは困難かもしれません。

また、この方向に舵が切られた場合も、差し当たり努力義務にとどめるか、女性役員の数を公表する義務を課すという形に落ちつく可能性が高いかもしれません」

中村弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中村 新
中村 新(なかむら あらた)弁護士 銀座南法律事務所
2003年、弁護士登録(東京弁護士会)。現在、東京弁護士会労働法制特別委員会委員、2021年9月まで東京労働局あっせん委員。2023年4月より東京労働局労働関係紛争担当参与。労働法規・労務管理に関する使用者側へのアドバイス(労働紛争の事前予防)に注力している。遺産相続・企業の倒産処理(破産管財を含む)などにも力を入れている。

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