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「お年玉をこのカップに」駅での「物乞い行為」をニコ生配信、なぜ書類送検された?
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「お年玉をこのカップに」駅での「物乞い行為」をニコ生配信、なぜ書類送検された?

駅の周辺で物乞い行為をおこなったとして、高松市の無職の男性(23)が2月下旬、軽犯罪法違反の疑いで書類送検された。男性はその様子をインターネットの動画配信サイト「ニコニコ生放送」で中継していた。

報道によると、男性は1月6日、JR高松駅周辺でパソコンを使って、「ボク、お年玉もらってないんだと思う。お年玉をこのカップに入れてください」などと訴える様子をニコニコ生放送で中継。不特定多数の人に「物乞い」をした疑いが持たれている。

軽犯罪法では、「こじきをし、又はこじきをさせた者」は「拘留又は科料に処する」と定められている(同法1条22号)。J-CASTニュースによると、男性は自宅内で物乞いの生放送を何度もおこなっており、警察から注意を受けていたが、やめなかったのだという。

だが、そもそも、なぜ「こじき」をすると、罪に問われるのだろうか。貧困のために生活できない人の「生きる権利」を脅かしているとはいえないだろうか。高木良平弁護士に聞いた。

●「働く能力のある人は、働いて食べていくべき」

そもそも、軽犯罪法の「こじき」とはどういうことだろうか?

「過去の裁判例によると、『こじき』とは、不特定多数人に対して、ある程度反復継続して物乞い(人の同情心にうったえて、金品の無償交付を求める行為)をすることです。

なので、たとえば、自分の親族に対して生活費を求めることは、不特定多数人に対するものではないので『こじき』にはあたりません。また、街頭の大道芸や路上ライブ等で投げ銭を求めたとしても、芸や演奏の対価であって、無償交付ではないので、これも『こじき』にはあたりません」

では、どうして、こじきをすると罪になるのだろうか。

「軽犯罪法が『こじき』をすることを罰する理由は、『働き得るすべての人が勤労によって生活を維持すべきことは、社会道徳の要求であり、その道徳律に反する行為を禁止するため』といわれています。

つまり、『働く能力のある人は、働いて食べていくべきだから』というわけです」

●生活困窮者の「生きる権利」を脅かしていないか?

街頭でおこなわれている募金活動は、軽犯罪法上の「こじき」にあたらないのか。

「このような考え方からすると、自分の生活費や遊ぶ金ほしさから物乞いをすると、『こじき』にあたります。しかし、一般的な募金活動は、被災者支援などの目的があり、『自分の生活のため』とはいえないので、『こじき』にあたらないと考えられます」

世の中には、何らかの事情があって、物乞いをせざるをえない人もいるかもしれない。軽犯罪法は、そんな人の「生きる権利」を脅かしているとはいえないのだろうか。

「たしかに憲法は、すべての国民に『生存権』を保障しています。本当に困窮している人は、物乞いの代わりに、本来は『生活保護』を受けることができます。

ただ、残念なことに、本来、生活保護を受けられるはずの人が、行政から不当に生活保護費の支払いを拒まれるというケースは決して少なくありません。生活保護費の支払いを不当に拒まれたために、餓死するという事件が現代のわが国でも起きています。

国が『生存権』を現実に保障するためには、むしろ生活保護をはじめとする社会保障を充実させることこそが肝要だと思います」

高木弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

高木 良平
高木 良平(たかき りょうへい)弁護士 MJ法律事務所
1974年、神奈川県生まれ。2004年に司法試験合格し、2006年桜丘法律事務所に入所。2015年8月1日に独立し「MJ法律事務所」(東京都墨田区)を開設。ボクシングのプロライセンスを取得したこともある(現在は失効)。

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