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「つまようじ少年」の撮影動画は「自作自演」だったのか――それでも犯罪になる?
つまようじ混入を装った「自作自演」だった可能性が浮上している

「つまようじ少年」の撮影動画は「自作自演」だったのか――それでも犯罪になる?

スーパーのスナック菓子に「つまようじ」を混入させたり、コンビニでペットボトル飲料を万引きしたりする様子の動画を投稿したとみられる19歳の少年が1月18日、建造物侵入の疑いで逮捕された。ただ、一連の動画をめぐっては、つまようじ混入や万引きを装った「自作自演」だった可能性が浮上している。

報道によると、コンビニに設置された防犯カメラには、万引きの様子が撮影される前に、少年がペットボトルを持ち込む様子が映っていた。また警察が少年の自宅を調べたところ、つまようじが混入されたスナック菓子と同じ商品で、穴が開いたものが見つかった。警察は、少年が「つまようじ動画」を撮影する際、スナック菓子を自ら持ち込んだ可能性があるとみている、と報じられている。

今回、少年は建造物侵入の疑いで逮捕されたが、今後、つまようじ混入や万引きの動画が「自作自演」だと判明した場合、何らかの罪に問われる可能性はあるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

●「自作自演」でも罪に問われる可能性がある

「もし『万引きの動画』が、少年による自作自演だった場合、窃盗罪は成立しないでしょう。窃盗罪は、他人の財物の占有を奪った場合に成立する犯罪だからです」

秋山弁護士はこのように説明する。では、つまようじ混入の動画についてはどうだろうか。

「仮に『つまようじ』を混入させたスナック菓子が、もともと少年の所有物だったとしても、罪に問われないとはいえません。

自分の所有しているスナック菓子を、いったん店の商品棚に置いたうえで、カメラを回しながら店に入る。そして、自分が置いたスナック菓子につまようじを混入する様子を、動画で撮影してYouTubeに投稿する――。

この一連の行為は、スーパーに『何者かが商品につまようじを混入した』と思わせ、警戒や客への注意喚起などの対応をとらせる効果があります。このように、業務を妨害するに足りる行為をすれば、業務妨害罪が成立するとされています」

●「威力」? それとも「偽計」?

業務妨害罪には、「威力」業務妨害と「偽計」業務妨害の2種類があるとされるが、今回はどちらが成立するのだろうか?

「自作自演によって閲覧者をだますという行為の態様からすると、『威力業務妨害罪』よりも『偽計業務妨害罪』が成立する可能性が高いでしょう(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)」

報道によると、少年は建造物侵入の疑いで逮捕されたが、どうしてそうなったのだろうか。

「業務を妨害する意図で、スーパーやコンビニに侵入したとなると、その行為自体が、管理権者の意思に反する立ち入りとなり、建造物侵入罪が成立するからです(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)。

なお、本件は、被疑者が19歳の少年とのことですので、実際には家裁送致後、刑事処分ではなく保護処分を受ける可能性のほうが高いでしょうね」

秋山弁護士はこのように述べていた。たとえ自作自演の動画であったとしても、罪に問われないということではないようだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

秋山 直人
秋山 直人(あきやま なおと)弁護士 秋山法律事務所
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は四谷にあり、不動産関連トラブルを中心に業務を行っている。

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