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増える「書店空白地域」――地方に「リアルな本屋」は必要か? 弁護士に聞いてみた
本屋では、思っても見なかった本との出会いがある

増える「書店空白地域」――地方に「リアルな本屋」は必要か? 弁護士に聞いてみた

「リアルな本屋」は必要ないのか――。新刊本を取り扱う書店が1軒もない市町村の数が332に上るという調査結果が報道され、議論を呼んでいる。

毎日新聞が報じた調査会社のデータによると、こうした「書店空白地域」は、北海道で47市町村と最も多く、次いで、長野県の35町村、福島県の22町村と続く。記事の中で、作家の阿刀田高さんは「本屋は地元の活字文化を支える存在であり、消滅は地方文化の衰退につながる」と指摘している。

この報道に対して、ニュースアプリ「NewsPicks」のコメント欄には多くの意見が寄せられた。堀江貴文さんの「なんでAmazonじゃだめなんだろうかね」といった指摘をはじめ、そもそも「リアルな本屋」の必要性を疑問視する声も少なくなかった。

では、日々の業務の中で多くの法律文献や書籍を読み、法律雑誌にも目を通している弁護士たちは、「リアルな本屋」の必要性について、どのように考えているのだろうか。弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。

●本屋が不要と回答した弁護士はゼロ

地域に「リアルな本屋」は必要か否か。弁護士ドットコムでは、そのような質問を投げかけ、以下の3つの選択肢から回答してもらった。

1.地域に「リアルな本屋」は必要→13人

2.地域に「リアルな本屋」は必要ない→0人

3.どちらでもない→1人

14人の弁護士から回答が寄せられた。回答は<地域に「リアルな本屋」は必要>に集中し、<必要ない>と回答した弁護士はゼロだった。ただ、「リアルな本屋が必要」と答えた弁護士でも「ここ数年は本屋にほとんどいかず、アマゾンで本で購入している」と答えるなど、複雑な実情がうかがえる。

以下では、自由記述欄で意見を表明した弁護士11人のコメント(全文)を紹介する。(掲載順は、地域に「リアルな本屋」は必要→どちらでもないの順番)

●地域に「リアルな本屋」は必要という意見

【秋山直人弁護士】

「地域に『リアルな本屋』があった方が良いことは間違いありません。立ち読みをしながら、思いがけない本と出会うことは楽しいものです。

ただ、アマゾン等の隆盛や活字離れで、地域の『リアルな本屋』の経営が立ち行かないのですから、どうしようもないですね。

実際、私もここ数年は『リアルな本屋』にほとんど行かず、必要な本が出てきたらアマゾンで購入してしまっています。。」

【岡村茂樹弁護士】

「仕事や散歩の途中、気が付くと本屋で立ち読みをしていた、などとという経験は一昔前なら誰にもあったはずです。

そんなとき、何気なく手にした書籍に惹かれ、時間の経つのも忘れてしまう。

本屋は、心のオアシスかも知れません。

普段から電子メールを扱い、書籍はネットで探す癖がついている現代人にとって、本屋は自分を取り戻す機会を与えてくれるでしょう」

【濵門俊也弁護士】

「当職は、活字文化にいまだ可能性を感じている一人です。

『Amazon』などで購入したり、電子書籍を利用することで十分であるというお考えがあるのはごもっともですが、すべての人々がその恩恵を受けられるわけではないことも見逃せません。当職も『Amazon』等を利用しますが、できるだけ『リアル本屋』を利用して書籍を購入するようにしています。

『リアル本屋』の店員さんらもポップ等で『こだわり』をもって宣伝されるなど、頑張っておられます」

【岡田崇弁護士】

「私は、電子書籍や『Amazon』などのネット通販を使うこともありますが、出先でリアルな本屋に立ち寄ることもあります。

リアルな本屋では、立ち読みをすることにより、本の全体を確認することができますし、普段見ないジャンルの本を見ることもできます。

何か目的があり本を探すときはネット通販でもよいでしょうが、趣味としての読書をするにはリアルな本屋にかなわないことが多いように思われます」

【梅村正和弁護士】

「必要かどうかと問われればやはり必要でしょう。アマゾンでも特定の本を検索した場合等に関連本も出てきますが、本屋ですと『あっ、こんな本があったんだ』という発見が多いですから。ネット販売はピンポイント的、本屋はマップ的とでも言えましょうか。立ち読みできることもメリットと言えますが、本屋さんによっては迷惑な話なのでどうなんでしょう(情報窃盗として刑法上は不可罰か。大手の本屋だと立ち読みコーナーみたいなのもありますが)」

【桑原義浩弁護士】

「昔から本屋は好きでした。買いたい本が決まっていれば、ネットで購入するのも悪くありませんが、本屋に行って、ズラリと並んだ本を見て、こんな本もあったんだと気が付いて購入する、そういう本との巡り合わせは、リアルな本屋でしか味わえません。

情報が不足しがちな地方では、ネット上の情報だけでは一面的になりがちなので、より一層あってほしいと思います」

【米田宝広弁護士】

「書籍が文化であることは間違いありませんが、その書籍を取り扱う本屋自体も文化であると思います。地元の図書館では必ずしも新刊が充実しているわけではなく、また、人気の新刊は借りるのに100人待ちということもあります。Amazonが本の購入を便利にしているという事実はありますが、すべての人がAmazonを使えるわけではありません」

【塩見恭平弁護士】

「ネット通販をうまく使える人が全てではなく、アナログツールのみを使用し、生活されている方も数多くいます。

さらに、都会の本屋さんにアクセスできる人が全てではありません。そのような需要を吸収するため、町の本屋さんは必要でしょう。

もっとも、私はネット通販を利用していますし、実物を見たければ品ぞろえのいい都会の書店に行ってしまいます。

少し強い言い方になってしまいますが、私のような顧客をどのようにつかむかが、今後の課題になっていくのではないでしょうか」

【居林次雄弁護士】

「地域に本屋さんが一軒もないという地方では、アマゾンなどのインターネット販売を使えば、事足りる、とも考えられます。

しかしながら、インターネットでは、数多くの本を選択するのにかなり疲れを覚える年になってきました。

やはり本屋に直接行って、本を手に取るほうが、選択するのによいと思われます。目指す本の他、どのような本が並んでいるのかをまんべんなくみるという点でも、地域に本屋さんがあるほうが、優れている点があると思われます」

【中井陽一弁護士】

「インターネットでの本の購入というのは、ある程度買う本が決まっていたり、どのような本が欲しいという目的が定まっている人が多いのではないかと思います。

他方で、本屋の場合、そのような目的をもった人ばかりではなく、ふらりと立ち寄って、表紙や帯を見て、さらには少しはしがきを読んでみて、興味をもったので買うという人も多いのではないでしょうか。

そういう意味では、本屋での本購入と、ネットでの本購入は、用途や目的が異なると思いますし、どちらかが無くなってもよいというものではないと思います」

●どちらでもないという意見

【岡田晃朝弁護士】

「本屋で何気なく本を見て廻ったりするのが好きで、若いころから、よく行ってました。

しかし、実際の購入は、9割以上ネットです。

書籍の数も多いし、行く手間は省けるし、検索も容易で、ポイントがたまったりということもありますし、絶版になったものも買えることがありますし、データで購入すれば即時に読めますし。

リアルな本屋がなくなるのは、感情的には、寂しく思いますが、実際に自分自身がほとんど購入していない以上、やむを得ないのかなとも思います」

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