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「朝起きると枕元に雪が積もっている」厳寒地の生活保護者が語った「暗い冬の生活」
生活保護受給者向け「宿泊所」での生活を語った関野雅邦さん

「朝起きると枕元に雪が積もっている」厳寒地の生活保護者が語った「暗い冬の生活」

政府が検討している「生活保護費の引き下げ」に反対する団体が11月5日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で集会を開いた。集会には、各地の生活保護受給者たちが出席し、自分自身や周囲の受給者たちが、どんな暮らしをしているかを説明した。

長野県諏訪市在住で生活保護を受けている男性は、寒冷地の受給者がどんな「冬」を送っているのか、次のように語った。

●病気でリストラ。持ち家も家族もなくした

「私が生活保護を受けるようになったのは昨年からです。それまでは製造業の管理職をしていましたが、持病が悪化し、ついにリストラされました。家族も持ち家もありましたが、その全てがなくなりました」

信州・諏訪は冬の寒さが厳しいことで知られ、湖が凍り付く「御神渡り」で有名だ。

「夜はマイナス20度を下回る寒さで、日中でも零下は当たり前です。そんな中でも、(地域の)生活保護受給者の6割は、築30年から50年、家賃2〜3万円のアパート住まいです。

老朽化が進み、すきま風が入り、日がほとんど当たらない。一般の人は見向きもしないような『ワケあり物件』です。

朝起きると枕元に雪が積もっていたり、流しにたまった水に薄氷が張っていたり。そんな部屋での生活なんです」

●布団にくるまり、たったひとりで過ごす

男性は持病を抱えているため、医師からは「暖かい部屋で過ごし、病状を悪化させないように」と言われている。しかし、「一日中ストーブを付けていれば、灯油はあっという間になくなってしまいます。そして、生活費をどんどん食いつぶすことになる」と男性は言う。結局のところ、寒い部屋で過ごさざるを得ないのだ。

冬場の11月から3月までは、暖房費として、一定額の「冬季加算」が支給される。冬季加算の額は地域や世帯人数などによって決まる。しかし、実際に必要な暖房費は個々人が住んでいる環境に大きく左右される。男性の周囲には、暖房費が不足し、不便を強いられている受給者がいるという。

「彼らの中には、冬でもストーブをつけず、吐く息も白い中、布団にくるまり、照明を消してたったひとりで過ごす、みじめな生活をしている人も少なくありません。信州で本当に辛い季節が始まりかけている中で、『冬季加算』を引き下げるという事案が考えられていることが信じられません」

男性はこう、語気を強めていた。

●受給者向け「宿泊所」での生活とは・・・

この集会では他にも、生活保護の受給者たちが、かわるがわる窮状を訴えた。その1人である関野雅邦さん(66)は、代表者が脱税で逮捕された埼玉県の宿泊所「ユニティー出発(たびだち)」で4年前、約4ヵ月間生活していたという。

当時、関野さんは勤めていた会社を解雇され、カプセルホテルやマンガ喫茶で寝泊まりをしていた。所持金が底をつきはじめ途方にくれていたとき、新宿駅で出会った見知らぬ男性に「うちに来れば寝るところもあるし、食事にも困らないから、とりあえず入ったほうがいい」と言われ、連れて行かれたのが、この宿泊所だったという。

「ユニティーの職員は、まず私を役所に連れて行き生活保護の申請をさせてから、生活保護費を袋ごと全額回収し、印鑑と生活保護受給票も回収しました。職員から渡される額は、1日500円。日用品を買うだけでお金はなくなり、就職活動をしたくても、交通費すら出せませんでした。

私が入居していた所は築50年くらいの木造の建物で、外壁や屋根はトタン張り、いつ崩れてもおかしくない老朽化した建物でした。食堂や屋根裏にはネズミがおり、死骸を片付けたこともあります。部屋はクーラーがないので夏は暑く、とても部屋にいられませんでした。6畳間を2人で使い、間仕切りもなく、プライバシーは守られませんでした」

●「逆らえば追い出されて、ホームレスに逆戻り」

関野さんは宿泊所に入った当時、賃料など契約の内容を伝えられず、どのような書類なのかもわからないまま、言われるがままに出された書類に署名・捺印したと話す。

「私も含めて、ユニティーのような無料・低額施設に入所する人は、所持金も住居もなく途方にくれています。宿泊所の運営者には逆らえず、言われるがままにいつのまにか契約書を書かされます。逆らえば施設を追い出され、ホームレス状態に逆戻りで、生きていくことが出来なくなってしまうからです」

関野さんは幸い、支援者や弁護士にたどり着き、結果的にそうした状況から脱することができた。今は生活保護を受けながら、大宮市内のアパートで暮らしているという。

他にも、東京都内で車いす生活をおくる男性から「今の住宅扶助基準では、車いすで生活するにはとても狭い部屋しか借りられない。車いす生活をしている仲間のほとんどが、身動きの取れないような部屋で生活している」といった話が聞かれた。

ホームレスや生活保護受給者の自立をサポートするNPO団体「もやい」の稲葉剛理事は、「このままでは、来年度の生活扶助基準削減のレールが敷かれてしまいます。当事者の声を政治家にぶつけて、住宅扶助基準を下げるな、冬季加算を削減するな、生活扶助の基準を上げなさいという声を、さらに大きくしていきたいと思っています」と語っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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