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無実を訴えて35年・・・「大崎事件」の弁護団が「裁判のやり直し」を求める
記者会見で裁判のやり直しを訴えた「大崎事件」弁護団の鴨志田祐美事務局長(左)

無実を訴えて35年・・・「大崎事件」の弁護団が「裁判のやり直し」を求める

信用性の低い共犯者の自白だけで「有罪」とされたのはおかしい――。いまから35年前の1979年、鹿児島県大崎町で、農家の男性(当時42)が牛小屋のたい肥の中から死体で見つかった「大崎事件」。この事件で逮捕・起訴され、殺人罪などで懲役10年の有罪判決を受けた原口アヤ子さん(87)は当初から一貫して否認しており、刑期を満了したいまも無実を訴えている。

この事件では、亡くなった男性の親族4人が犯行に関与したとして、有罪判決を受けている。まずは、主犯とされた原口さん。それに、原口さんの夫で亡くなった男性の兄。さらに、もう一人の兄とその息子だ。このうち原口さんとその夫、もう一人の兄の3人は、男性の首にタオルを巻いて窒息死させたとされている。その後、4人でたい肥置き場に死体を遺棄したとされた。

原口さんは現在、裁判のやり直し(再審)を求めており、いまは最高裁が裁判をやり直すかどうかを審理している段階だ。また、袴田事件や名張ぶどう酒事件と並び、日本弁護士連合会が再審請求を支援している。原口さんの弁護団と支援団体は9月10日、最高裁に再審開始を求める請願書を提出。同日、東京・霞が関で記者会見を開き、「最高裁は再審開始を決定すべきだ」と訴えた。

●「有罪の証拠」が揺らいでいる

弁護団の事務局長をつとめる鴨志田祐美弁護士は会見で、原口さんの有罪の根拠とされた「共犯者の自白」の信頼性に「合理的な疑いがある」と強調した。法医学者や心理学者といった鑑定人の新たな証言によって、自白の信頼性が揺らいでいるのだという。

鴨志田弁護士は「原口さんは(罪を認める)自白をしたことは一切なく、共犯者とされた知的能力の弱い人たちの自白だけで、有罪が成り立っている」と説明。「最高裁には、その部分もきちんと見ていただきたい」と訴えた。

●「原口さんにとっては最後のチャンス」

原口さんを有罪とした確定判決は、原口さんの夫らが「原口さんから殺害の指示を受けた」と自白したことにもとづいて、原口さんが夫らと共謀し、義理の弟をタオルで絞め殺したと認定した。しかし弁護団は、「共犯者」たちはいずれも知的・精神的な障害をかかえ、自己を防御する能力を十分にもっていなかった、と指摘。「裁判所はこの障害への配慮を欠いたまま審理を進めた」と主張している。

さらに、凶器のタオルは結局見つからないまま。また、タオルで絞殺されたのならば残るはずのうっ血が遺体に認められなかったことも、法医学鑑定によってわかってきたという。

無実を晴らすまでは死ねない――。そんな決意を抱く原口さんだが、高齢のため日一日と心身が衰えているという。「今回が彼女にとって最後のチャンスになる。最高裁には35年間の無実の訴えを本気で審理してほしい」と、鴨志田弁護士はそう力を込めていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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