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木曽路「しゃぶしゃぶ」偽装――「松阪牛」と称して「安い肉」を提供したら詐欺罪か?
ブランド牛とそうでない牛肉とでは、味も値段も異なる

木曽路「しゃぶしゃぶ」偽装――「松阪牛」と称して「安い肉」を提供したら詐欺罪か?

全国展開するしゃぶしゃぶ店「木曽路」が、大阪や神戸などの3店舗で、銘柄を偽装した牛肉を使用していたことがわかり、問題となった。「松阪牛」などと称しながら、それよりも安い別の国産牛肉を客に提供していたのだ。木曽路は8月中旬に記者会見を開いて謝罪した。

「松坂牛」などとして提供された「より価格の安い肉」は、2012年4月から今年7月まで、合計約7000食に及んだ。偽装の多くは大阪の北新地店で、和牛(しゃぶしゃぶ1人前で税別5500円)を、松阪牛(同7000円)と偽るなどしていたという。

報道によると、木曽路は記者会見で、「3店の料理長合計4人が偽装していた」と説明した。同チェーンでは、料理長に食材を発注する権限があり、料理の原価管理が料理長の人事評価に結びつくとされる。料理長は社内調査に対して、「原価調整のためにやった」と答えているという。

こうした木曽路側の説明に対して、利用者からは「詐欺そのものだ」といった怒りの声も上がっている。もし、木曽路が発表した通り、料理長が「原価調整のために」異なる種類の肉を提供していたとしたら、こうした行為は詐欺罪になるのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。

●発表通りなら「詐欺罪成立」の可能性あり

「結論から言いますと、もし木曽路の発表どおり、料理長が意図的に食材偽装を行っていたのだとしたら、料理長に詐欺罪が成立する可能性があります。

ただ、詐欺罪に法人を処罰する規定はありませんので、法人としての『木曽路』に詐欺罪は成立しません。処罰の対象となるのは、あくまで詐欺行為を行った個人や、それに手を貸した協力者です」

そもそも詐欺罪は、どんな場合に成立する犯罪なのだろうか?

「詐欺罪は、相手をあざむくことで錯誤に陥らせ、その錯誤を利用して、相手に財物を交付させるという犯罪です」

錯誤とは、ざっくりいうと「誤解」のことだ。また、「財物を交付させる」ことには、「お金を支払わせる」ことも含まれる。そうすると今回のケースは・・・。

「松阪牛よりも安価な肉を『松坂牛』と偽って提供し、『松坂牛』としての料金を請求する行為は、客を錯誤に陥らせる、典型的なあざむく行為です。

客は、そのあざむく行為によって、松阪牛よりも安価な肉を『松坂牛』と錯誤して、『松坂牛』としての料金を交付させられたわけです。

したがって、あざむく行為をした人には、詐欺罪が成立する可能性があります」

ところで、客がお金を支払うのは「店」に対してで、料理長の懐に入るわけではないはずだ。それでも詐欺罪になるのだろうか?

「詐欺罪は、財物の交付を受ける人が、詐欺行為をした本人でなくても成立します」

冨本弁護士はこのように指摘していた。

木曽路は現在、第三者委員会の設置を検討しているようだが、どうしてこうした事態が起きてしまったのか、実態のさらなる解明と、顧客への説明が求められていると言えそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

冨本 和男
冨本 和男(とみもと かずお)弁護士 法律事務所あすか
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。

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