夏の厳しい暑さも和らいできたが、まだまだ残暑が続きそうだ。これから高校野球大会や音楽フェスなど、野外のイベントに出かける人もいるだろう。そんな炎天下のイベントで注意したいのが、熱中症だ。
毎年のように数多くの人が、熱中症で病院に搬送されている。とくに野外イベントでは、熱中症のリスクが高い。参加者自身が、水分をこまめにとるなど対策をする必要があるだろう。
では、イベントの主催者は、参加者が熱中症にならないように対策を講じる義務はないのだろうか。渡邉正昭弁護士に聞いた。
●クラブ活動では監督やコーチの責任がポイント
「熱中症による救急搬送や死亡事故で裁判になるケースは、学校のスポーツクラブ活動によく見られます」
渡邉弁護士はこう切り出した。では、スポーツクラブ活動で発生した熱中症の責任は、誰にあるのだろうか。
「クラブの監督やコーチの指示は絶対とされ、選手たちはコントロールされています。自分の意志で熱中症を防ぐのは難しく、熱中症で倒れた場合、監督やコーチの責任が問題となるでしょう」
では、野外イベントの場合はどうだろうか。
「野外イベントでは、主催者側がチラシなどで熱中症に気を付けるよう参加者に呼びかけ、救護室や会場に救護のためのスタッフを配置していることもあります。
そのうえで、参加者側も熱中症予防の工夫をするわけですが、野外イベントで発生した熱中症は、自己責任として処理されがちです」
●イベント主催者が参加者を「コントロール」しているか
しかし、いくら自分で気を付けていても、やむをえず熱中症になってしまうときもある。たとえば、炎天下で長時間の行列を余儀なくされた場合はどうなるのか。
「スポーツクラブ活動と同様に、参加者が自分の意志で熱中症を防ぐことは、やはり難しいと思います。
主催者が参加者の行動をコントロールしているような場合、天候や会場の状況によっては、主催者に熱中症の発生を予見し防止する法律上の義務があります」
行動をどこまでコントロールしているのかがポイントになりそうだ。では、熱中症の防止のためにはどんな取り組みが必要なのだろうか。
「主催者は、気象情報や会場の状況に応じた、適切な防止措置をとらなければなりません。
熱中症の発生が予想される場合には、イベント会場の設営やスタッフの配置、水の用意など、熱中症防止のための正しい知識や経験を活用した、十分な防止措置をとらなければなりません」
渡邉弁護士はこのように締めくくった。