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「準麻薬A」「危険ドラッグ」・・・弁護士が「脱法ドラッグ」の新名称を考えてみた
「脱法ドラッグ」の使用者による交通事故が社会問題化している

「準麻薬A」「危険ドラッグ」・・・弁護士が「脱法ドラッグ」の新名称を考えてみた

「脱法ドラッグ」の使用者による交通事故が社会問題化している。6月下旬には、東京・池袋の繁華街で、脱法ドラッグの一種である「脱法ハーブ」を吸引したとみられる男性が自動車を暴走させ、8人を死傷させる事故を起こした。

このような事態を受けて、厚生労働省と警察庁は7月5日から18日までの間、薬物の危険性がより強く認識されるように、「脱法ドラッグ」に代わる新しい名称を、メールまたは郵便で募集している。厚労省によると、新しい名称は次の4つの条件をみたす必要があるという。

(1)危険性の高い薬物であることが理解できること

(2)幅広い世代まで理解できること

(3)「ハーブ」という呼称名は特に危険性について誤解を与えることから、原則使用しないこと

(4)公序良俗に反しない表現であること

弁護士のなかには、薬物事件などに弁護人として関わる人も多い。「脱法ドラッグ」の名称変更ついて、どのように考えているのだろうか。弁護士ドットコムに登録している弁護士たちに聞いた。

●「名称を変更すべき」という意見が大多数

「脱法ドラッグの名称は変更すべきか?」。このような質問でアンケートをしたところ、18人の弁護士から回答があった。以下の3つの選択肢から回答してもらった。

1 「脱法ドラッグ」の名称を変更すべき→16票

2 「脱法ドラッグ」の名称を変更すべきではない→0票

3 どちらでもない→2票

18人の弁護士のうち、「変更すべき」が16人、「変更すべきではない」が0人、「どちらでもない」が2人だった。9割近くの弁護士が、「脱法ドラッグの名称を変更すべき」と答えた。

さらに、「変更すべき」と回答した弁護士に、「新しい呼称案」を自由回答欄でたずねたところ、「準違法ドラッグ」や「有害ドラッグ」、「脱法麻薬」などの案があがった。一方、「どちらでもない」と回答した弁護士の中には、「薬物に依存する風潮は名称変更による啓蒙では変えることができない」という意見があった。

アンケートで回答した弁護士のうち、自由記述欄で意見を表明した弁護士7人の「コメント全文」を紹介する。(掲載順は、変更すべき→どちらでもないの順番)

●「脱法ドラッグ」の名称を変更すべきという意見

【居林 次雄弁護士】

脱法ドラッグという名称は変更すべきであると考えます。

違法な麻薬として、取り締まりの対象になるということを広く世間に知らしめる名称がよろしいでしょう。

身体にも悪影響のある麻薬であることを示す名称を新しく採用して、警告することが効果的であると思われます。

準麻薬Aとでも名称をつけて、取り締まりの対象であることを表示すべきでしょう。

【梅村 正和弁護士】

法の規定によって同様な効果を及ぼす薬物は一律に取り扱うことができるようにすべきでしょう。薬物としての効果に変わりが無いのに、化学構造が少し違うだけで違法になったり脱法になったりというのは市民感覚と一致しません。脱法ハーブを吸うような人は自己規制力が弱く、何でも自分の都合の良いように解釈してしまう人間が多いでしょうから「脱法」という言葉も換えた方が良いのでしょう。

【湯本 良明弁護士】

「脱法」という言葉だと、「法規制を脱している→違法ではない→体に悪影響はない」というイメージを抱きかねないと思われるので、名称を変更したほうがよい。

「脱法ドラッグ」に代わる名称としては、「準違法ドラッグ」などといった、違法な薬物であるとのイメージを持たせるものがよいと思う。

なお、問題となっている脱法ハーブなどは、早急に法的手当をして規制すべきであることは言うまでもないだろう。今後の法整備に注目したい。

【秋山 直人弁護士】

「有害ドラッグ」でどうでしょうか。

確かに「脱法」だと、違法ではない、という語感があります。さらに「ハーブ」と付くと、ちょっと気の効いたおしゃれな語感があります。

ここは身体に「有害」であることを分かりやすく伝える呼称に変えた方が良いのではないかと思います。

「危険ドラッグ」でも良いかもしれませんが、火薬、引火性液体類などの「危険物」を連想させてしまう気もします。

【伊藤 建弁護士】

厚生労働省は「違法ドラッグ」と言いたいのですが、警察庁からすれば「違法」ではないため取り締まることができないものに「違法ドラッグ」と言うわけにはいかない。消費者庁は、妥協案として「いわゆる脱法ドラッグ(違法ドラッグを含む)」という表現を採用していました。

しかし、「脱法」という言葉は「合法」との印象を与えてしまう可能性があります。

そのため、変更する必要性はあると思います。

とはいえ、どのような名称がよいのかは、センスのない私には思いつきません。

【鈴木 宏昌弁護士】

麻薬及び向精神薬取締法で所持等が禁止された薬物は、「麻薬」と呼ばれています。

「脱法ドラッグ」は、それに該当しないものの、「麻薬」と同様ないし類似の危険がある薬物のことでしょうから、「脱法麻薬」と呼んだらいかがでしょうか。

「脱法・ドラッグ」という現在の呼称ですと、「ドラッグ」の部分が中立的で、人によってはファッション感覚があるように受け止めかねないという印象です。

●「どちらでもない」という意見

【工藤 啓介弁護士】

まず、何故に権力側である厚生労働省と警察が、取り締まり対象である国民に、今後所持した場合取り締まり対象になるであろう薬物の名称を募集するのか理解に苦しむ。愚民意識の現れであるとしか考えられないし、おどろおどろしい名称を付けたからと言って、薬物に依存する風潮は名称変更による啓蒙では変えることができない。物に対する名称は国家が決めるものではない。名称が自然に変化すればそれはそれで構わないという考えなので、どちらでもないに投票する。法規制の必要性は否定しないが、違法とされていない薬物に対して「麻薬」とか「違法」という名称を付することを提案する弁護士が存在することも奇異に感じる。

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