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マイホーム購入で親からもらった「新築祝い」贈与税がかかるのはどんなとき?
ローン返済、家具購入など新築祝いの使い道は様々だ

マイホーム購入で親からもらった「新築祝い」贈与税がかかるのはどんなとき?

「住宅の新築祝いで妻の親から200万円をもらった」「新築祝いとして両親から400万円をもらった」――。インターネット上のQ&Aサイトにはこのように、マイホーム購入時にまとまった金額を両親から新築祝いとしてもらったという投稿が多く寄せられている。その投稿者に共通する悩みは「贈与税がかかるかどうか」だ。

年間110万円を超える金額を受け取ると、贈与税が発生し、申告・納税が必要になるからだ。だが、住宅の購入に関して、両親や祖父母からまとまった金額をもらった場合、贈与税がかからない制度があるらしい。どういうことだろうか。税理士の足立仁氏に聞いた。

●贈与税がかかるのは、どんな場合?

「若年世代の住宅購入を促して、景気を刺激するために作られた『住宅取得等資金の贈与税の非課税制度』というものがあります。若年世代が家を買うとなると、親から資金援助をしてもらうことが多いですよね。その資金援助に贈与税を課さないことにしたのです」

通常の贈与のケースと、どう違うのだろうか。

「贈与税は、とても税率が高く、お金を受け取った人が申告・納税を行うものです。しかし、住宅取得等資金の非課税制度を使った場合、500万円まで非課税で贈与を受けることができます(平成26年に一般住宅を取得した場合)。

これに、もともとの贈与税の110万円の非課税を合わせることができるため、610万円までが非課税になります。もし、この610万円について、通常の納税申告を行ってしまうと、なんと85万円もの贈与税を納めることになりますのでご注意ください」

この制度を利用する際のポイントは何だろうか?

「自分の直系の両親、祖父母からの贈与である必要があります。つまり、『妻の父親から新築祝いをもらった』といったケースは適用を受けることはできません。

また、非課税の枠は『資金をもらった方』の合計額です。例えば、自分の父・母からそれぞれ400万円ずつもらった場合、合計で800万円となり、ききほどの非課税枠500万円を超えます。この場合は、超えた分の300万円について、通常の贈与税を申告・納税することになります」

●「省エネ住宅」は一般住宅より優遇される

どのような住宅が対象になるのだろうか?

「贈与してもらったお金は、自分の『居住用住宅の取得』に充てる必要があります。つまり、別荘の取得に充てた場合や、賃貸住宅の取得に充ててしまうと対象外です。

対象となる住宅にもいろいろと要件があります。通常の新築一戸建であれば、まず問題ありませんが、例えば、床面積50㎡未満の単身者向けマンションなどは対象外です。中古住宅だと、築年数が20年を超えると適用を受けられないケースが出てきます。

また、贈与を受けた翌年の3月15日までに、その住宅に住む必要があります」

さらに、購入する住宅が「省エネ住宅」の場合は、非課税枠が大きくなるという。

「平成26年の非課税枠は、一般住宅の場合で500万円までですが、省エネ性能の高い住宅の場合には、非課税枠が1000万円になります。住宅の性能証明書等が必要になります。」

さらに非課税枠の金額は住宅を取得した年にもよるそうだ。

「実は、平成26年は、この制度の非課税枠の金額が非常に少ない年です。非課税枠の金額は毎年変動しており、平成21年が500万円、平成22年は1500万円、平成23年は1000万円でした。そして平成24年から平成26年は以下のように毎年減少しています。

(1)省エネ等住宅の場合

平成24年1500万円/平成25年1200万円/平成26年1000万円

(2)一般住宅の場合

平成24年1000万円/平成25年700万円/平成26年500万円

平成27年以降の非課税枠がどのくらいの金額になるかは、まだ発表されていません。景気対策のために、増額される可能性もあると思います」

●「相続時清算課税制度」と組み合わせる手も

条件を満たした場合は、どうすればよいのだろうか?

「この制度の適用を受けるには、翌年2月1日から3月15日までの間に、必ず贈与税の申告書を提出する必要があります。もし一日でも遅れれば、適用を受けることはできません。

『うっかり忘れていました』は通らないのでご注意下さい。期限を過ぎてしまった場合には、通常の贈与税申告を行うことになり、税率の高い贈与税とペナルティの加算税を納めることになります」

足立税理士はこのように説明する。

「なお、非課税枠が足りない、という場合には、直系の親から2500万円まで無税で贈与を受けることのできる『相続時精算課税制度』を組み合わせることも検討して下さい。

ただし、いったん相続時精算課税制度を使ってしまうと、将来の相続税にデメリットが生じる可能性もあるのでご注意ください」

このような、さまざまな税制の優遇措置は、住宅の新築を考えているならば、頭に入れておいたほうが良いだろう。事前に税理士に相談しておくのもよいかもしれない。

【取材協力税理士】

足立仁(あだち・じん)公認会計士・税理士

東京大学経済学部卒業。税理士法人ファザーズ代表社員として、多くの資産家・企業経営者の顧問を務める。2013年より日本公認会計士協会東京会幹事。

事務所名:税理士法人ファザーズ

事務所URL:http://souzokuzei.or.jp/

(税理士ドットコムトピックス)

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