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ASKA容疑者の弁護人・神田安積氏のポリシー「話したくないことも話してもらう」
弁護士ドットコムの取材に答える神田安積弁護士(2011年3月撮影)

ASKA容疑者の弁護人・神田安積氏のポリシー「話したくないことも話してもらう」

覚せい剤の所持と使用の疑いで警視庁に逮捕されたASKA(本名・宮崎重明)容疑者(56)の弁護人を、東電OL殺人事件の再審でネパール人男性の無罪判決を勝ち取った神田安積(あさか)弁護士が担当することが分かった。

報道によると、神田弁護士は、1997年に起きた東電OL殺人事件で、強盗殺人容疑で逮捕・起訴されたネパール人をほかの弁護士とともに担当して、一貫して無実を主張。一審は無罪だったものの、控訴審で逆転有罪となり、最高裁でも上告を棄却された。しかし、再審が認められ、2012年に無罪判決を得た。

神田弁護士はこのほか、プロ野球選手の交渉もサポートしてきた。覚せい剤事件については、「裁判所の判断基準が定型化されている」と指摘する意見もあるが、今回、神田弁護士が担当することで、裁判の行方がどうなるのかが注目される。

弁護士ドットコムでは、3年前の2011年5月に神田弁護士にインタビューを行っている。そのときの主なやり取りを以下に紹介する。

●一番大変なのは「依頼者を説得しなければならないとき」

――弁護士として仕事をする上での信条・ポリシーを教えて下さい。

依頼者の方から、話したくないことも話してもらうことができるかが大切であると思っています。警察官や検察官は、被疑者の取調べに際して、「言いたくないことは言わなくてよい」と黙秘権を告知します。逆に、弁護士は「言いたくないことこそ話して下さい」という仕事なのだと思います。いうまでもなく仕事を丁寧にすることが大切であり、そしてスピード感もとても大切です。

――弁護士になって一番大変だと感じることは何ですか。

案件の見通しや事実関係について、自分の依頼者を説得しなければならないことがあることです。依頼者の希望を100%叶えてあげたい気持ちはあっても、事案の見通しを考えたときに、相手方に譲歩しなければならない場合があります。でも、そのとき依頼者に理解いただくためには、日ごろから依頼者のために一生懸命働いていることが必要であることはいうまでもありません。

――弁護士になって特に印象に残っている事件(案件)について教えて下さい。

自分が関与した事件はほとんど忘れていませんが、ある傷害事件で逮捕された少年のことは特に強く印象に残っています。その少年はサッカーの特待生として私立高校に入学したのですが、両親が多額の負債を抱えてしまい、学校を辞めなければならなくなりました。生活は荒れ、不良仲間と一緒に行動していたところ、ある傷害事件に加担してしまいました。自分が原因ではないのに、大好きなサッカーをあきらめざるをえなかった少年が自暴自棄になってしまう気持ちはよく分かりました。だからこそ彼を立ち直らせようと思いました。

幸い保護観察処分になり、彼は定時制の高校に通い、その後ある資格を取り、今は仕事上の付き合いにもなりました。別の弁護士でも同じ結果になったかもしれませんが、私は誰かの一生に付き合っていくことができ、自分自身も励まされるような依頼者に出会うことができ、この事件だけでも弁護士になった意味があったと感じました。

――弁護士になろうと思ったきっかけを教えて下さい。

中学生の頃に、「悪法も法か」(間違った法律も守らなければいけないのか)ということを考えさせられる授業があり、初めて法律に興味を持ちました。しかし、法律に関心を持つことと弁護士を目指すことは別のことであり、実際、法学部に進学したものの、弁護士になろうとは思っていませんでした。しかし、大学4年生になり、就職活動をし、いろいろな業界を回るうちに、これまで自分を支えてきてくれた周りの人に直接力になれる仕事は何か、その想いが叶えられる仕事は弁護士ではないかと考えるようになり、弁護士になろうという気持ちを固めました。

(弁護士ドットコムニュース)

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