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一人暮らしのアパートに「いとこ」が転がり込んできた! 追い出すことはできるか?
たとえ親族であっても、一人暮らしの家に男性を居候させることに抵抗を感じる女性は多いだろう

一人暮らしのアパートに「いとこ」が転がり込んできた! 追い出すことはできるか?

一人暮らしのアパートに転がり込んできた「いとこ」を追い出したい――。そんなネットの投稿が話題を呼んでいる。

投稿によると、部屋の主は19歳の女性で、両親が他界したため一人で働いて生計を立てている。そんなところに、大学4年のいとこ(成人男性)がやってきた。就職活動のためにバイトを辞め、生活費が足りなくなったという。

ところが、このいとこの男性は、アパートの家賃を含めたお金を全く出さないだけでなく、家事も一切やらず、食事も女性が用意したものを食べている。にもかかわらず、しばしば女性にキレることがあるという。女性もついに我慢ができなくなったようで、「怒りが収まらないから、追い出したい」と書いている。

このように自宅に親族がきて居座ってしまった場合、どうすればいいのか。「親族間には扶養義務がある」とも聞くが、それに違反しない形で、迷惑な親族を追い出すことはできるのだろうか。小澤和彦弁護士に聞いた。

●いとこ同士は扶養義務がない?

「民法は親族間の扶養義務について、『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』と定めています。子や両親、祖父母、そして、兄弟や姉妹には、お互いに扶養する義務があることになります」

とすると、直系血族(子・父母・祖父母)や兄弟姉妹以外は、扶養義務はないと言い切ってよいのだろうか。

「そうとは言い切れません。民法では、『家庭裁判所は、特別の事情があるときは、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる』としているのです。このため、裁判所の判断により、直系血族や兄弟姉妹以外でも、特別に扶養義務を負わされる場合もあります」

そうすると、今回の事例の「いとこ」という関係は、どうだろう。

「いとこは、父や母の兄弟姉妹の子なので、直系ではありません。したがって、当然に扶養義務があるわけではありません」

それでも、「三親等の親族」であれば、特別の事情があるときは、裁判所に扶養義務を認定されることがありうるわけだが・・・。

「この点、いとこは、『四親等の親族』です。したがって、当然の扶養義務がないのはもちろんのこと、裁判所の判断により、いとこに対する扶養義務が定められるということもないのです。

ですから、結論として、いとこに一緒に住ませる気がないのであれば、出て行ってもらうこともできます。もし、いとこが自分で立ち退かない場合は、裁判で建物退去の請求をすることもできるのです」

●兄弟や姉妹の扶養義務はどうなるのか?

では、いとこではなく、自分の兄弟姉妹が居候した場合は、扶養義務は生じるのだろうか。

「そうですね。さきほど説明したように、兄弟姉妹の場合は、扶養義務があります。しかし兄弟姉妹だとしても、当然に、自分だけが負担を負わされるということにはなりません。親やほかの兄弟たちも同様に扶養義務があるのですから」

それは、どうやって分担を決めればよいのだろう。

「たとえば、兄弟姉妹が複数いて、そのうちの一人が経済的に窮乏しているとき、誰が扶養しなければいけないのか、扶養をどの程度しなければいけないのかは、明確に決まっているわけではなありません。話し合いがつかなければ、最終的には、裁判所が裁量で定めることになります」

小澤弁護士は、このように説明していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

小澤 和彦
小澤 和彦(おざわ かずひこ)弁護士 弁護士法人東京多摩法律事務所
第二東京弁護士会多摩支部 両性の平等委員会委員、東京都西東京市男女平等参画推進委員会副委員長。

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