筆者は現在27歳の女性だ。世間的には、第一次結婚ラッシュと呼ばれる世代である。そのためか、ここ数ヶ月、披露宴のご案内や、結婚パーティーのお知らせに関する連絡が後を絶たない。
それらの連絡を受けているうちに、ある事に気がついた。それは書面ではなく、携帯メール宛に送られてくる「結婚パーティー」や「二次会」のご案内に関するものだ。たいていの場合が、幹事の携帯電話から参加見込みのある友人・知人に向けて一斉送信されているが、困ったことにすべてのメールアドレスが、受信者のメールアドレスを非公開にするBCCではなく、他の受信者にメールアドレスが公開されるCCに入れられているのである。これでは、自分のメールアドレスが他人の目に触れるだけでなく、自分自身も知る必要のない他人のメールアドレスを手に入れてしまうことになる。
その危機感のなさは携帯電話同士だから生じるのか、それとも幹事にとってはすべて連絡先を知っている「親しい知人」だからなのか。理由はよく分からないが、いずれにしてもメールを送られている側にとっては、同報されている人全員が知り合いとは限らないのである。
これが企業であったらどうだろうか。顧客のメールアドレスをCCに入れて一斉送信をしたら、「個人情報漏洩問題」として、一大事になる。程度にもよるだろうが、新聞沙汰になることだってありえる。それでは、個人だから大きな問題にならないのかといったら、そんな事はないはずだ。個人のメールアドレスが高額で売買される時代なのだから、大きな問題に発展することも大いに考えられるだろう。こうした行動は、個人情報保護の観点でみた場合、違法性はないのだろうか。近藤公人弁護士に話を聞いた。
●特定の個人を識別できるメールアドレスは、「個人情報」に該当する
「個人情報とは、特定の個人を識別できる情報ですので、例えば名前をローマ字にしただけの、kondokimihito@~~というようなメールアドレスは、個人情報に該当します。そして、一見識別できないメールアドレスでも、他の情報と容易に照合することができ、特定の個人を識別できる場合は、個人情報に当たります。」
「しかし、abcdefg@~~というようなメールアドレスであれば、検索しても通常は個人を特定できないので、個人情報に該当しないでしょう。個人情報に該当しないメールアドレスを他人にわかる形で一斉送信しても、違法とはいえません。」
●不快感は法的に保護されない
「問題は、一斉送信され、自分のアドレスが他人にわかってしまうこと、および他人のアドレスを知ってしまうことについての不快感です。残念ながら、不快感は、一般的には法的に保護されません。」
「例えば、自宅の郵便ポストに、見たくもないチラシが入っていて、不快感があっても、違法ではありません。そのチラシを捨てれば良いだけですから。個人情報保護法ができる前、同窓会名簿も売買されていましたが違法ではありませんでした。」
「但し、今後、法規制ができたり、現時点で特定できないメールでも将来特定できる状況になれば、違法となるでしょう。」
明らかに個人が特定できるメールアドレスでやり取りをした場合、これは個人情報保護法に違反する可能性があるが、個人を特定できない場合には、違法性はないことが分かった。ただし今後、何かしらの被害を訴える者が続出したり、社会問題化した場合には法規制ができ、違法となることも考えられる。
メールを一斉送信する場合には、自分にとっては知人であっても、送られている相手にとってはどうだろうか、と考えることは社会人としてのマナーでもあるので、トラブルが起きる前に、BCCに入れて送るなど送信方法を変えることを勧めたい。