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大阪市内の戸籍を「興味本位」で閲覧した職員 「犯罪」として処罰されるのか?
行政官庁は大量の個人情報を取り扱っている

大阪市内の戸籍を「興味本位」で閲覧した職員 「犯罪」として処罰されるのか?

大阪市の区役所で戸籍事務を担当する職員2人が、橋下徹氏など市内に本籍をもつ人の「戸籍情報」を業務と関係なく閲覧していたことがわかり、問題になっている。大阪市が2月下旬に発表して、明らかになった。

報道によると、2人はそれぞれ大正区役所と淀川区役所で戸籍担当になって以降、業務と関係がないにも関わらず、橋下氏の戸籍を「興味本位」で閲覧した。ほかにも、有名人や同僚、知人の戸籍も不正に閲覧していたという。

戸籍担当の職員は専用の端末を使って、市内に本籍を置く人の戸籍情報をすべて閲覧できる状態だった。今回のケースのように、職員が市民の戸籍情報を業務に関係なく閲覧した場合、どんな処罰を受けることになるのか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●地方公務員法や個人情報保護条例に違反する?

この2人の職員は、業務の必要性がないにもかかわらず、個人情報を閲覧している。好ましくない行為であることは明らかだが、このような行為は犯罪として処罰の対象となるのか?

「報道によれば、こうした個人情報を他人に提供したり、不正な利益を図ったり、情報を収集したりといった事情はなさそうなので、犯罪に当たるというのは困難だと思われます」

このように伊藤弁護士は述べる。具体的には、どういうことだろうか。

「地方公務員法上、職務上知り得た秘密を漏らした場合、1年以下の懲役又は3万円以下の罰金になりますが、外に漏らしていないのであれば、これには当たりません」

では、個人情報保護条例については、どうだろうか。

「大阪市個人情報保護条例に、もっぱら職務の用以外の用に供する目的で個人情報を収集した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する(77条)という規定があります。しかし、今回の事例では『収集した』とまでは言えないと思います」

だが、刑罰の対象にならないとしても、この職員の行為に問題はないとはいえない。

「今回の職員の行為は、単なる興味本位で、戸籍という非常に重要な個人情報を『事務の目的の範囲を超えて』利用したものであって、個人情報保護法や大阪市個人情報保護条例の趣旨に反した利用であることは明らかです。したがって、これらの職員が地方公務員法上の懲戒処分を受けることは十分に考えられます」

大阪市は今回の問題を公表した際に、職員の処分を検討していることを明らかにしている。なんらかの懲戒処分があったとしても、やむをえないといえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

伊藤 諭
伊藤 諭(いとう さとし)弁護士 弁護士法人ASK川崎
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。中小企業に関する法律相談、弁護士等の懲戒請求やトラブル対応などを手がける。第一法規「懲戒請求・紛議調停を申し立てられた際の弁護士実務と心得」著者。

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