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「女子トイレ」から出てきた男が逮捕! 「建造物侵入罪」はどんなときに成立するのか
男性が「女子トイレ」に入ることは普通はないが……。

「女子トイレ」から出てきた男が逮捕! 「建造物侵入罪」はどんなときに成立するのか

女性用トイレに侵入したとして、20代の男子大学生が2月上旬、「建造物侵入罪」の疑いで秋田県警に逮捕された。報道によると、この大学生は、秋田市内のショッピングセンターの中にある女性用トイレの個室から出てきたところを施設関係者に取り押さえられ、警察に引き渡されたという。

一般論として、女性用トイレに男性が入ったらダメ、というルールは分かる。だが、トイレでは異性の清掃員を見かけることもある。どんな場合に、建造物侵入罪とされるのだろうか。そのポイントについて、中田雅久弁護士に聞いた。

●建造物侵入罪が成立する3つのポイント

「建造物侵入罪で処罰の対象となっているのは、(1)『正当な理由なく』(2)『人が看守する建造物』に(3)『侵入する』という行為です(刑法130条)」

この犯罪には、3つのポイントがあるようだ。1つずつ、説明してもらおう。

「まず、物理的な側面である(2)から説明すると、『人が看守する建造物』とは、管理者の事実上の管理・支配が及んでいる建造物、ということです。

たとえばショッピングモールは、業務時間終了後にシャッターを閉めて全体を閉鎖しますよね。そこからもイメージできるとおり、管理者の事実上の管理・支配は、こうした施設全体に対して及んでいます。

女性用トイレもその施設の一部ですから、個々のトイレに見張りがいなくても、『人の看守する建造物』に該当するのです」

他のポイントについては、どうだろうか。

「次に(3)ですが、この場合の『侵入』とは、管理者の意思に反する立入りを指します。

この点、実際に管理者に呼び止められる必要はありません。結果的に、誰にも見とがめられないで中に入れたという場合でも、犯罪は成り立ちます。

一般的に、男性が女性用トイレに入ることを承諾する意思は、施設の管理者にはありませんから、多くの場合『侵入』に該当するでしょうね」

(2)と(3)に当てはまるとすれば、あとは(1)の「正当な理由」がない場合はアウト、ということになりそうだ。逆にいうと、異性用トイレに入ることが「正当」とされるのはどんな場合だろうか?

「それこそ、清掃員が掃除のために立ち入るような場合ですね。正当な理由や管理者の許可があれば、異性用のトイレに入っても、建造物侵入罪は成立しません」

結局、今回のケースでは、この3つの要件を満たすとみられるから、建造物侵入罪の容疑で逮捕されたということなのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中田 雅久
中田 雅久(なかた まさひさ)弁護士 多摩の森綜合法律事務所
刑事事件、離婚等の個人を依頼者とする事件を中心に幅広く担当する。第二東京弁護士会多摩支部刑事弁護委員会委員長、同両性の平等に関する委員会委員、東京三弁護士会障害者等刑事問題検討協議会委員など。

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