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恋人や配偶者の携帯電話を見てトラブルにならないようご注意を

恋人や配偶者の携帯電話を見てトラブルにならないようご注意を

恋人と付き合う、あるいは配偶者との結婚生活を通じて、相手への愛情が深くなっていくほど、浮気の心配は出てくるものだ。「自分以外にも付き合っている相手はいないだろうか?」「他の女性とこっそり会ったりしていないだろうか?」不安な気持ちを抱えたまま付き合っていると、些細な言動が気になり、喧嘩や、時には別れに発展することもある。

そんな不安を払拭したいと、相手の携帯電話を見たいと思うこともあるだろう。しかし、通常は自制心が働きなかなかそうはしないものだ。ただ、仮に相手が携帯を机の上に置いたまま外出をした、相手がシャワーを浴びているすきに携帯電話が鳴ったなどの状況で、衝動に駆られメールや着信履歴を見てしまった場合、どの程度の法律違反にあたるのだろうか。プライバシー問題に詳しい堀晴美弁護士に話を聞いた。

●慰謝料の請求対象になるが、実際に請求されることはまれ

「たとえ、恋人や配偶者であっても、携帯電話の内容をみることは、原則としてプライバシーの侵害になり、民法上の不法行為に該当し、慰謝料の請求対象になります。」

「ただ、全くの第三者の携帯電話の内容を見る場合と違って、恋人や配偶者の携帯電話の内容は、不貞行為の証拠として裁判所で採用されることが多く、不貞行為を認定する際の決め手になることが多々あります。その場合、無断で携帯電話の内容を見たことが不法行為として慰謝料を請求されるケースはまれだと言えます。ですから、相手方の不貞行為が疑われたら、携帯電話のメールを証拠とし保存しておくことが必要になります。」

「ただし、原則として、相手方の了解なく携帯電話の内容をみること、そしてそれを保存しておくことは、プライバシーの侵害にあたり、不法行為として慰謝料を請求される可能性があるということは、心にとめておいた方がよいと思います。そして、できれば他の証拠で不貞行為を立証できるようにしておくことが必要かと思います。」

一方、見る気はなかったが、相手が携帯電話をいじっている最中に画面が視界に入り、他の異性に送っている親密なメールを見てしまったことでトラブルに発展した場合、これも法律違反になるのだろうか。再び、堀弁護士に聞いた。

●故意の有無によって違法性が異なる

「この場合は、上記の件とは違って、『偶然見てしまった』つまり故意がないわけですから、不法行為は成立しません。従って、慰謝料を請求されることもありません。」

「この場合も、不貞行為の証拠としてメールの内容を証拠として保存しておくことが必要になりますが、保存することは、単に見てしまったということとは異なり、故意がありますから、やはり原則としてプライバシーの侵害に該当します。」

「ただ、この場合も、上記のケースと同様、不貞行為の証拠としてよく使われますし、その場合に、プライバシーの侵害にあたるとして慰謝料を請求されるケースはまれです。ただし、保存しておくことはプライバシーの侵害にあたるということを心にとめておいてください。」

個人の携帯電話は恋人や配偶者も踏み入れられない、極めてプライベートな領域である。そのため浮気の証拠をつかみたいと考えている場合、携帯メールや着信履歴は格好の材料となるだろう。しかし、相手方の了解なしに携帯電話を盗み見ることは、プライバシーを侵している事であり、場合によっては慰謝料を請求されることもある。堀弁護士も指摘しているように、相手方の浮気調査を行う場合には、まず違法性のない別の手だてを検討してみてはどうだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

堀 晴美
堀 晴美(ほり はるみ)弁護士 堀国際企業法務法律事務所
企業の海外進出のサポートを主としているが、離婚、男女関係の問題も取り扱っている。「United Nations Register of Damage caused by the Construction of the Wall in the Occupied Palestinian Territory」の非常勤理事も兼務。国際政治経済が主な関心事で、毎日ジムに通うのが日課。

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