手をつないで寄り添うカップルが街を行き交う。そんな光景が絵になる季節だ。クリスマスに愛の証として、高額のプレゼントを贈った人もいたことだろう。だが、そんな二人に別れの日がやってくることもある。
なかには、「別れるならプレゼントを返せ」と要求する無粋な人もいるようだ。ネットのQ&Aサイトには、彼氏に別れを切り出したところ、「これまでのデート代やプレゼントを返して」と言われたという女性の相談が寄せられている。
もらった側からすれば、「一度はくれたものなのに……」という当惑する思いだろう。はたして、恋愛関係が破局したら、それまでに相手からもらったプレゼントは返さないといけないのだろうか。男女関係をめぐる法律にくわしい小澤和彦弁護士に聞いた。
●プレゼントは「贈与契約」にあたる
「プレゼントを贈るというのは、法律上では、『贈与』契約にあたります。
贈与とは、当事者の一方が自己の財産を『無償』で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる、という契約です。
要するに、彼が『これを(タダで)君にあげるよ』とプレゼントを渡し、彼女が受け取った時点で完結する契約ごとなのです」
そうすると……?
「したがって、いったん彼女が受け取ってしまった以上は、その時点で、プレゼントの所有者は彼から彼女に変わり、彼が返してくれということは、原則としてできません」
●前提条件に「勘違い」があれば・・・
「ただし、別れ話を切り出したとたん、彼氏が『プレゼント返してくれ』と言うのには、彼氏なりの理屈があるはずです。
たとえば、『ずっと、彼女でいてくれると思ったからプレゼントを贈ったのであって、こんなに早く別れるのであれば、プレゼントを贈るつもりはなかった』というケースもあるでしょう。
もし、前提条件に勘違いがなければ、そんな意思表示はしなかったはずだ……こうした場合を法律用語では『錯誤』があったと言います。契約は、この錯誤によって無効だとされる場合もあります」
そういった場合であれば、「プレゼントを返して」と言えるのだろうか?
「ただし、この錯誤による無効を主張するためには、その前提条件『ずっと、彼女でいてくれる』ことが明示されていることが必要です。
つまり、『ずっと、別れないでいてくれたら』とか、『少なくとも3年間は彼女でいてくれたら』など、条件を明示してプレゼントを渡していれば、返却が認められる可能性はあります。
しかし、実際にはそんなことをする人は稀でしょう。結局のところ、プレゼントを返してもらうのは難しいでしょうね」
小澤弁護士はこのように結論づけていた。たしかに、せっかくもらったクリスマスプレゼントにそんな「条件」が付いていたら、興ざめしてしまうだろう。恋人へのプレゼントは、そのあたりもしっかりと考えに入れたうえで贈るのが良さそうだ。