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従業員の居場所を「アプリで監視」 プライバシー侵害になるか?
位置情報アプリが入ったスマホを従業員に持たせ、その居場所を常にチェックしている会社があるという

従業員の居場所を「アプリで監視」 プライバシー侵害になるか?

スマートフォン(スマホ)の醍醐味の一つは、便利な「アプリ」をダウンロードして、簡単に利用できることだろう。世の中には、すでに多くの高機能アプリがリリースされている。しかし、なかには会社で働く従業員にとって、少々うんざりするような使われ方がされているものもあるようだ。

読売新聞によると、位置情報アプリが入ったスマホを従業員に持たせ、その従業員の居場所を常に把握している会社があるという。従業員の居場所を「監視」することで、サボり防止などのメリットはあるということだが、少しやり過ぎているようにも思える。

以前には、恋人の居場所を追跡できる「カレログ」という位置情報アプリが、「プライバシーの侵害ではないか」などとネット上で話題になった。では、会社がアプリを利用して、従業員の居場所を常に監視することはプライバシーを侵害していることにならないのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

●会社は「監視アプリ」の存在を告知すべき

秋山弁護士は、今回のようなアプリを使ったとして、プライバシー侵害になる場合とならない場合があると指摘する。プライバシー侵害に「ならない」ための条件とは何なのか。

「従業員のプライバシー侵害にならないためには、まず、会社が支給するスマホであること、そして、会社側がそのような機能を持つアプリがインストールされていることを従業員に明示的に説明することが必要でしょう」

さらに、従業員の位置情報収集の方法として、次のようなルール化も必要だとする。

「勤務時間内のみGPSでの位置情報収集を行い、勤務時間外は位置情報収集を行わないようにするか、従業員側で、勤務時間外はアプリの位置情報収集機能を停止してよい、あるいはスマホの電源をオフにしてよいとルール化しておくことが必要と考えます。

そのような前提がみたされているのであれば、たとえば、外回りの営業マンが勤務時間内にどこで営業活動をしているのか会社が把握しようとすることには、一定の必要性・合理性が認められるように思います」

このように、秋山弁護士は、プライバシー侵害にならないためには、一定の条件を満たす必要があると説明する。

●「デートコースまで会社に把握されたら、たまらない」

他方で、プライバシー侵害になり不法行為(民法709条)が成立する場合として、次の様なケースが考えられると説明する。

「勤務時間外も会社が常に位置情報収集を行い、従業員にはスマホの電源・アプリのGPS機能を常にオンにしておき、連絡が取れるように指示しておくとなると、従業員のプライベートな領域に踏み込むことになります。

アフターファイブのデートコースまで会社に把握されたのではたまったものではありません」

たしかに、この様な場合であれば、会社側の情報収集も度を過ぎているといえる。

結果として、秋山弁護士は「会社側の運用しだいで、プライバシー侵害として違法になる(不法行為が成立する)可能性が高い」と指摘する。

サボリ防止のために渡されるスマホであっても、業務外の行動まで監視を続けられ、拒否ができないとすると、もはや従業員の士気を損なうだけのプライバシー侵害の道具といえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

秋山 直人
秋山 直人(あきやま なおと)弁護士 秋山法律事務所
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は四谷にあり、不動産関連トラブルを中心に業務を行っている。

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