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飲食店経営の女性が暴力団に「用心棒代」を払っていたーーなぜダメなのか?
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飲食店経営の女性が暴力団に「用心棒代」を払っていたーーなぜダメなのか?

大阪府公安委員会は同府の暴力団排除条例に基づき、飲食店を経営する20代の女性に対して暴力団員への「利益供与」をやめるよう勧告した。大阪府警が6月下旬に発表したが、女性が指定暴力団山口組系幹部に「用心棒代」として、現金を渡していたことが問題となった。

報道によれば、女性は2011年7月~2014年12月、30代の山口組系幹部に「用心棒代」として毎年2万円を渡していたという。幹部は女性が経営する店でトラブルを解決したことをきっかけに、2006年12月ころから用心棒を引き受けていた。

公安委員会は、この幹部に対しても、用心棒代の要求をやめるよう勧告し、暴力団対策法に基づく「用心棒行為」の防止命令を出した。いったい、この用心棒行為とは、何だろうか。

●警察庁「暴力団情勢」が伝える実態

警察庁が毎年まとめる白書『暴力団情勢』には、警察がやめるよう勧告や命令を出した「用心棒」行為の実例があげられている。

・住吉会傘下組織組員(43)が、縄張内に所在する飲食店の経営者に対し「エンソ代(みかじめ料)3万円だけ頼むよ」といい、用心棒行為をおこない、その後も継続。経営者等のために用心棒の役務を提供してはならないと命じた(埼玉)(『平成26年の暴力団情勢』警察庁)

・山口組傘下組織組長(49)が、縄張内に所在する飲食店の経営者に対し、用心棒になると約束した上、同組長の配下組員らが同経営者に対し、「これからは、何かあったら俺達に連絡して。1店舗2万円だから」と言った。同組長を含め配下組員らも用心棒になることを約束したため、同経営者等のために用心棒をしてはならないことを命じた(北海道)(『平成25年の暴力団情勢』警察庁)

法律は「用心棒行為」をどのように禁じているのだろうか。

●用心棒代が「暴力団の資金源になる」

民事介入暴力の問題にくわしい尾崎毅弁護士は次のように説明する。

「『暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律』(いわゆる『暴対法』)第9条において禁止される27類型の暴力的要求行為のなかに、『縄張り内で営業を営む者に対し、営業所において、用心棒の役務(営業を営む者の営業にかかる業務を円滑に行うことができるようにするため、顧客、従業員その他の関係者との紛争の解決又は鎮圧を行う役務)の有償の提供を受けることを要求すること』が含まれています(同条5号)」

暴力団が、その縄張りにある店の「用心棒」になるという名目で金銭を要求する行為は、法律で明確に禁じられているのだ。

店側にとって「用心棒代」を支払うことは、どのような問題があるのだろうか。

「紛争などの解決を暴力団に委ねることは、紛争の適正な解決を図れないばかりか、新たな紛争に発展する危険があります。さらには、用心棒代は暴力団にとって重要な資金源のひとつです。

暴対法では、用心棒代を要求する行為を禁止して、指定暴力団員側に規制を及ぼしています。また、各都道府県(市町村)の暴排条例において、用心棒を『有償で依頼』した場合は、『利益供与』として勧告対象にするなどの規制を加えました。これらにより、暴力団の資金源を断とうとしているのです。

このような見地からすれば、用心棒を頼まないこと自体が重要だと理解できるのではないかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

尾崎 毅
尾崎 毅(おざき たかし)弁護士 山田・尾崎法律事務所
一般民事事件、家事事件、企業法務等の業務を広く扱っているが、特に民事介入暴力対策については、登録1年目から、所属弁護士会の委員会に所属し、現在も所属単位会、日弁連の両民暴委員会に所属し、具体的事件の処理や、各種講演、執筆等を行っている。

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