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「空襲被害は防空法のせいで拡大した」 大学教授が「戦争の裏側」を中学生に解説
焼夷弾の実物を示しながら、「空襲」について解説する水島朝穂・早大教授

「空襲被害は防空法のせいで拡大した」 大学教授が「戦争の裏側」を中学生に解説

憲法や戦争、平和について学ぶイベント「中学生憲法ワークショップ」(東京弁護士会主催)が8月7日、東京・霞が関の弁護士会館で開かれた。約40人の中学生が参加し、戦争体験者の話を聞いたり、空襲にまつわる資料を見たりしながら、戦争や平和について話し合った。

資料は、早稲田大学の水島朝穂教授(憲法学)らが提供したもので、中学生たちは第二次大戦時の「空襲」にまつわる焼夷弾やヘルメット、国民向けに出された「防空の手引き」、アメリカ軍が空襲時にまいたビラなどを見ながら、水島教授の解説に耳を傾けた。

水島教授はまず、空襲の際に覆いかぶせた「灯火管制用のカバー」を子どもたちに見せた。国民は、家屋の明かりが敵の的にならないように、警報が鳴ったらいち早く電灯を消したり、覆い隠すよう指導されていた。しかし、アメリカ軍にはレーダーがあったので「実は全く意味がなかった」という。

●避難を禁じた「防空法」という法律

また、水島教授は空襲時に被害が広がった一因について、「防空法という法律が避難を禁止していたからだ」と指摘した。

防空法では、国民が「退去禁止命令」に従わなかった場合、半年以下の懲役または500円以下の罰金が科されることになっていたという。また、建物の所有者らには防火の義務が科され、違反者には500円以下の罰金があったそうだ。ちなみに当時の500円は、教員の給与9カ月分にあたる金額だという。

防空法以外にも、逃げることが許されにくいプレッシャーがあったという。たとえば「防空演習」という大阪府統監部のチラシでは、「家庭の防空は家族の手で」として、焼夷弾で燃えている家屋の火を、女学生や婦人がバケツを持って消そうとしている絵が掲載されている。内務省発行の「時局防空必携」には、「命を投げ出して持ち場を守ります」と書かれているという。

だが実際には、焼夷弾にはゲル状の燃料が入っているため、いったん火が付くと家庭レベルで火を消すのは難しいと、水島教授は指摘する。バケツで水をかけたり、ほうきで叩いたりしても火は消えないどころか、燃料が飛び散って逆に危険だという。

「日本は、非科学的な方法で焼夷弾を消せると国民にすり込み、消火活動をしない国民には罰則を科していた」「空襲の被害者を殺したのは米軍だが、空襲被害が拡大した背景には、こうした日本の体制があったことも知るべきだ」。水島教授はこのように指摘し、「歴史には裏がある」という言葉で、話を締めくくった。

参加した女子中学生(15)は「安保法制が学校や家で話題になって、『安保って何なのか、もっと知りたい』と思って参加した。実弾や穴の空いた壁を見て、戦争がいっそうリアルに感じられ、怖さがわかった」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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