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「法的に、政治的に、経済的に間違っている」憲法学者らが安保法制法案「撤回」訴える
緊急記者会見の様子

「法的に、政治的に、経済的に間違っている」憲法学者らが安保法制法案「撤回」訴える

政府は5月15日、集団的自衛権の行使を可能にすることを盛り込んだ安全保障法制の関連法案を国会に提出した。このことを受けて、憲法学者や弁護士、元官僚らでつくる「国民安保法制懇」は同日、衆議院第一義員会館で記者会見を開き、法案の撤回を求める声明を発表した。

会見で、憲法学者の小林節・慶應義塾大学名誉教授は、「安保法制は、法的に、政治的に、経済的に間違っている」と指摘。

「現行の憲法9条2項が、軍隊と交戦権を禁じている以上、日本は海外で軍事活動できないと決まっている。これをやぶって海外で軍事活動を行うならば、堂々と国民に問うて、憲法改正をしてから行けばいいのに、その議論が吹っ飛ぶのはおかしい。違憲状態のままで話が進んでいる」と法的観点から強い口調で批判した。

●「『後方支援だから戦争ではない』はあからさまなウソ」

さらに、日本が憲法9条のもとに戦後70年間、「非戦の大国」としての地位を保ってきたことを指摘。安保法制が成立すれば、「過去70年間でつくった、たいへんな遺産をかなぐり捨てることになる」と政治的な損失について述べた。

「総理は何回も『後方支援だから戦争ではない』と言っているが、これはあからさまなウソ。後方支援なしに戦争なんかできないし、現場に行けば頼られる以上、抜けることはできない。後方支援とは、前からではなく後ろから戦争に突っ込んで行くということだ」

経済的な面についても、安倍首相が5月14日の閣議決定後に行われた記者会見で、「この法制によって防衛予算が増えていくことはない」と発言したことを引き合いに批判した。

「アメリカがいつでも戦場に日本人を呼び出せる制度を作ってしまったら、戦争で疲弊したアメリカが日本人を頼らないわけがない。アメリカは戦争に莫大な金をつぎ込んだ結果、経済的に破綻した。日本が財政的に第二のアメリカになることは読めている。

後方支援だから戦争ではないとか、お金はかからないとか、こういうことをつらっと言えるのは恐ろしいと思う。政策当局に知性が無いのか、国民をなめきっているとしか思えない」

●伊藤真弁護士「言葉の抽象性に惑わされず、想像力を持つことが重要」

憲法問題に詳しい伊藤真弁護士は会見の出席者に対して、「今回の法制によって様々な不利益や危険に晒されるであろう国民一人一人が、声を上げていかなければならない」と呼びかけた。

「集団的自衛権が認められれば、他国に対する武力行使や現場での武器使用ができるようになってしまう。それは、わざわざ海外に出かけて行って人を殺し、学校や家や教会を壊し、そこにいる人々の生活を破壊することだ。

武力行使や武器使用といった言葉の抽象性に惑わされず、日本がどういう国になろうとしているのか具体的な想像力を持つことが重要だ。声を上げるという勇気と誇り、そして想像力が我々一人一人に求められている」

(弁護士ドットコムニュース)

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