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<難民申請>異議申し立て棄却の翌日に強制送還、裁判できず…スリランカ人が国を提訴
原告代理人をつとめる指宿昭一弁護士

<難民申請>異議申し立て棄却の翌日に強制送還、裁判できず…スリランカ人が国を提訴

難民不認定処分の異議申し立て棄却を告げられた翌日に、チャーター機で強制送還されたため、憲法で保障された「裁判を受ける権利」を奪われたとして、スリランカ国籍の男性2人が10月19日、国を相手取り、それぞれ損害賠償500万円を求めて東京地裁に提訴した。

●スリランカの左派政党員で、身の危険を感じて来日

訴状などによると、原告の1人で、スリランカ国籍の男性(46歳)は1987年ごろから、同国の左派政党員として活動。対立組織から暴行・脅迫を受けるなどして、スリランカ国内を転々とする生活を送ったあと、身の危険を感じて1999年に来日した。

男性は2011年、難民申請をおこなったが、「迫害のおそれがない」などとして不認定処分となったため、異議を申し立てていた。その間、非正規滞在だが、一時的に収容されない「仮放免」の許可を受けて、東京都や茨城県などで暮らしていたという。

●強制送還されると、難民不認定の裁判ができなくなる

事態が急転したのは、2014年12月17日のことだ。男性はこの日、東京入国管理局に呼びされて、仮放免の延長不許可と、異議申し立ての棄却決定が通知された。さらに、不服がある場合は、この決定から6カ月以内に取消訴訟ができることも告げられた。

この際、男性は「殺される」「危ない」「弁護士呼んで」と繰り返し訴えた。弁護士に電話をかけることが許されたが、その猶予は30分しか与えられず、弁護士につながらなかったため、入管職員に携帯電話を取り上げられた。

不在着信に気づいた弁護士が、架電から40分以内にかけ直したが応答はなかったという。この日のうちに、弁護士が東京入国管理局に駆けつけて、面会を求めたが認められなかった。男性は翌18日、法務省入国管理局のチャーター機で強制送還させられた。

いったん強制送還させられると、難民不認定を争う訴訟を起こしても却下される。日本国憲法では、外国人にも「裁判を受ける権利」を保障していることから、原告側は、強制送還によって「本来受けられる裁判が受けられなくなった」と主張している。

●「司法での判断機会が奪われる危うい方法だ」

原告代理人と支援者が10月19日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。代理人によると、難民不認定の異議棄却後、すぐにチャーター機で強制送還されるケースが増えているという。ある代理人は「司法での判断機会が奪われる、非常に危うい方法だ」と述べた。

2014年12月18日は、今回の原告2人を含むスリランカ国籍の26人とベトナム国籍6人の計32人が法務省入国管理局がチャーターした飛行機で一斉送還された。この中には、原告を含めて、難民申請していた人が複数名含まれていた。なお、スリランカ国内は、不安定な政治情勢がつづいているという。

(弁護士ドットコムニュース)

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