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隣地の排水管の利用問題

このコーナーは、法律問題について、初歩的なご説明をするというものです。
そして、私は、「不動産取引」について、数回にわたり解説することになっています。

Q
Xの家は袋地となっているが、新たに公共下水道の処理区域内となった。
下水を公共下水道に流入させるためには、Xの土地から隣人Yの設置した排水管に接続して排水しなければならない。
しかし、Yは、その接続を拒否しており、同意しようとしない。
このような場合、Xは、隣人Yの設置したY土地上の排水管にXの土地から接続して排水することができるか。


A

1. 下水道法の規程


  1. 下水道法10条1項では、「公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道区内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管その他の排水施設(以下「排水設備」という)を設置しなければならい。」と定められており、公共下水道の処理区域内となった場合には、公共下水道への排水が義務付けられております。
     また、下水道法11条1項では、「第10条・第1項の規程により排水設備を設置しなければならない者は、他人の土地又は排水施設を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水施設を設置し、又は他人の設置した排水施設を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとって最も損害の少い場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。」と定められております。
    また、民法上の相隣関係の規定では、下水に関しては、民法220条で高地の土地所有者は他人の低地を通じて下水道等に至るまで余水(雨水など)を通過させることができると規定しており(余水排池権)、民法221条では高地の土地所有者は低地の土地所有者が設置した排水管を使用し下水道等に至るまで排水することができると規定しております(流水用工作物の使用権)。
    これらの民法の規定は高地と低地との間の相隣関係の規定ですが、学説・判例等は、高知・低地間の相隣関係だけでなく、袋地の相隣関係への類推適用も肯定しております。
    また、上記下水道法11条の規定では、「流入させることが困難であるとき」と規定されておりますので、当該土地が袋地である場合だけではなく、隣地の排水設備を使用すれば設置費用は少額で止まるが、公共下水道までの排水管を全て自分で設置するとなると著しく過分の費用がかかる場合なども含まれます。
     この点に関連する裁判例としては、東京高判平成9・9・30(判タ981号134頁)は、「付近の土地の排水設備の設置状況および本件土地の所在する場所の環境に鑑みると、本件土地につき排水設備等を設置することは、本件土地の利用に特別の便益を与えるというものではなく、むしろ、建物の所有を目的とする本件借地契約に基づく土地の通常の利用上相当なものというべきであるから、賃貸人である控訴人らにおいて、本件土地につき排水設備等を設置することにより回復し難い著しい損害を被るなど特段の事情がないかぎり、その設置に協力すべきものであると解するのが相当である。そうであれば、控訴人らは、被控訴人が本件土地につき排水工事および水洗化設備の新設工事をするにあたり、これを承諾し、かつ、右工事の施工を妨害してはならないものといわなければならい」旨判示しています。 
     もっとも、東京地判平成9・7・10(判タ966号223頁)は、水洗式の便所へ切り替えるため、下水の排水のために隣人の設置した既存の排水管の利用の承認を求めたという事案で、既設の排水管がたまたま建物の下を通っているという特殊事情を考慮し、新たに水洗式便所汚水が合流することにより、万一、管が詰まるなどして改修工事の必要が生じた場合には、建物を一部にせよ取り壊すなどして下水工事を施工しなければならなくなるおそれがあり、迂回路になるとはいえ、前記私道に排水管を新設するという方法も十分考え得ること等を理由に、請求を棄却しました。
    このように、隣地の排水設備を使用することで隣地土地所有者に特段の損害を与える恐れがあり、費用はかかっても迂回路をとること排水することが可能な場合には、隣地の排水設備の使用が認められない場合があります。


  2. 隣地使用者の負担義務
     しかし、他方で、隣地の土地使用者は、排水のため他人の土地を使用することで損害を与えた場合、通常生ずべき損失を補償しなければなりません(下水道法11条4項)。
     これは、「損失を補償」と規定されているため、隣地の土地使用者の過失責任ではなく、無過失であると解されます。
     また、他人の排水設備を使用する者は、その利益を受ける場合に応じて、設置、改善、修理、維持に要する費用を負担しなければなりません(下水道法11条2項、民法第221条2項)。
     この費用負担の割合は、「その利益を受ける場合に応じて」分担すると規定されていることから、両地の排水量若しくは総床面積などを基準に算定することになると考えられます。

2. 本設問の回答


 本件では、Xの土地が「公共下水道の排水区域内にある」ことから下水道法第11条が直接適用されます。
 そして、Xの土地は袋地でありますので、「他人の土地又は排水施設を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるとき」に該当しますので、隣人Yの設置した排水管に接続し利用することができます。
 したがって、上記のような法律の規定をYに説明し、それでもYがYの排水設備への接続を認めない場合には、Xは、Yに対し、「Yの排水設備への接続・利用の同意」を求める訴訟を提起することになるでしょう。

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秋山 亘 弁護士 寄稿担当:秋山 亘 弁護士
所属:佐久間・秋山法律事務所
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このコンテンツは寄稿担当弁護士の責任のもと作成されたものです。弁護士ドットコムは内容の正確性、真実性等について責任を負いませんのでご了承下さい。
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